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ガストロノミーク 18

 

■ 偉大なシャンパーニュ・メゾン『SALON(サロン)』

先月、10月28日に、偉大なシャンパーニュ・メゾン『SALON(サロン)社』の昼食を兼ねた試飲会が行われました。会場となったのはホテルオークラ。今回SALONと共に和食の献立が用意されました。

ここで、シャンパーニュについて少し復習しましょう。特に、今回のポイントとなるのはその製造方法です。

自然条件は決して恵まれているとはいえず、むしろ大変厳しいくらいです。冷涼で雨も比較的多いこともあって、ぶどうの糖度はなかなか上がりにくく、どちらかといえば酸が強すぎてしまう傾向にあります。その強い酸を克服し、かつまろやかな味わいにし、天候に恵まれない年でもコンスタントにワイン(シャンパーニュ)を生産するために、アッサンブラージュという方法が発見されました。

また、シャルドネ(白ぶどう品種)だけで造ると酸味が勝ってしまうという考えから、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエ(黒ぶどう品種)を使いボリュームやコク、そしてまろやかさを出すことに成功。

そして、異なる産地や畑のワインを混ぜることで複雑性を出し、さらに複数年のヴィンテージのワインをブレンドすることにより、年によるばらつきをなくし、それぞれのシャンパーニュ・メゾンのスタイルを表現できたのです。そのため、単一畑のヴィンテージ・シャンパーニュでも必ず20%は貯蔵分としてストックすることが義務付けられているのです。

このようにして瓶詰めされたワインは、リキュール・ド・ティラージュを加え瓶内二次発酵に進んでいくのですが、ここから秘伝の味わいへと変わっていくプロセスなのです。リキュール・ド・ティラージュとは、糖分がアルコールと炭酸ガスに変わるというアルコール発酵の力を利用するために、アッサンブラージュで造られた非発泡性ワインに、加える酵母と糖分を含む液体のことです。

これにより瓶内に約6気圧の炭酸ガスを閉じ込めることに成功したわけです。でもやっかいなことに、瓶内には酵母の死骸である『滓(おり)』が残っています。そしてこの澱を瓶の口に集めるにルミュアージュ(動瓶)という作業を行い、デゴルジュマンと呼ばれる滓引きをするのです。この間、実は澱の主成分であるタンパク質がアミノ酸に変わり、ワインの中に溶け出して、味わいに旨味やコクをもたらすのです。

この作用が瓶内二次発酵ならではの副産物で、フランス・ロワール地方で造られるミュスカデなどで行われるシュール・リー*が、長い時間行われるのと同じ意味合いになるわけです。

*シュール・リー[sur lie]:滓の上という意味。醸造過程で発生した滓をそのまま底部に残した状態でアルコール発酵後から一定期間保存すること。ミュスカデ・シュール・リーはアルコール発酵から翌年3月1まで保存されなければならない、と規定されている。また、そのワインは一冬のみ発酵槽または樽内で保存され、瓶詰めされるまで滓引きせずに残される。

 

■ 6ヴィンテージを試飲

復習はこのくらいにして、この日に試飲したものをご紹介しましょう。現在の最新ヴィンテージになる1995年から始まり、1990、1988、1985、1983、1982の6ヴィンテージです。

来日していた社長のディティエ・デュポン氏によると、SALONは、これから発売予定のものも含めて、過去100年間に37ヴィンテージしか造っておらず、1995年は34番目のヴィンテージになるそうです。また、1995年は1990年以来久しぶりに造られた年で、造られなかった年のワインは、同社が経営する『Dolamotte(ドゥラモット)社』にまわしてしまうのだそうです。

さて、今回の1品目の料理は

『越前蟹薄塩焼き 菊蕪甘酢漬け 酢橘』

この料理には2種類のヴィンテージで比較試飲しました。新しいヴィンテージの1995年と1990年です。SALONのタイプは大きく分けて2つに分かれるようです。 ひとつは1995年のような酸が素晴らしく強くエレガントなタイプ、もうひとつは1990年のような酸がやさしいふっくらとしたボディを感じるタイプ。

越前蟹の持つ磯の香りや甲殻類特有の香ばしさには、2つのタイプどちらでも合わせやすいようで、1995年と合わせると、ヴィンテージの特徴でもあるエレガントで華やかな印象、また、1990年と合わせると、ふっくらと料理全体を包み込むような香りや味わいとなります。おそらく酸味のやわらかさがそうさせているのだと思います。

2品目の料理は『牡蠣・帆立貝の雲丹ソース焼き ブロッコリーと紅葉芋』

この料理には1988年がサーヴィスされました。1988年は1990年のような酸味のやさしいタイプで、全体的にさらに酸味をやさしく感じるヴィンテージです。ワイン自体に磯の香りが強く感じ、料理と合わせるとさらに磯の香りが広がる感じです。

「SALONは偉大な白ワインそのもの」とよく言われるのがとても理解できるヴィンテージだと思いました。味わい的には、旨味が凝縮し、また日本酒にも似たニュアンスがあるので雲丹ソースにも良く合うようです。

3品目の料理は『海老としめじ、ほうれん草 菊花浸し』

この料理はだし汁の中で全体を含め煮にしたもので、シャンパーニュの持つ旨味成分に全体的に合いそうです。一緒にサーヴィスされたのは1985年です。

このヴィンテージは生産量が少なく、非常に凝縮したワインに仕上がったそうです。気候的には「春寒く夏暑い」といったように、年間の温度変化が大きかった年で、結果的にとてもエレガントな酸味がワインに備わったようです。フルーツの香りは全体的に少なく、旨味が凝縮した印象となっています。少し硬さがあり、ミネラル的なニュアンスもとても強く感じます。

4品目は『鱈白子天婦羅 美味出汁 大根卸し 茶塩、レモン』

1983年は酸味がやさしく、ふっくらとした旨味を感じる味わいで、1988年に少し似ています。やはり日本酒の旨味と類似していて、美味出汁ととてもよく合います。白子の持つふっくら感にもとても相性が良いようです。

5品目の料理は『特選和牛 和風ロースト 刻み生野菜 ポン酢卸し』

1982年の偉大な年のSALONと合わせました。このヴィンテージは酸味がとても強く、ようやく香りや味わいが開き始めたようです。イメージとしては1995年に似ているので、1995年も長熟型といえそうです。とてもピュアな印象です。 この料理の和牛そのものが持つ繊細な味わいが、1982年のエレガントさにとてもよく合います。付け合せの野菜もシャンパーニュの旨味を引き立てています。驚くことに、この1982年のSALONは、まだ硬さが残り開ききっていないようです。

今回は偉大なシャンパーニュ『SALON』と和食とのマリアージュを経験しましたが、予想以上に和食とよく合い、改めてその偉大さを実感しました。多くの日本の料亭でSALONなどの特にブラン・ド・ブランのシャンパーニュをワインリストに入れていることも理解できます。とても有意義な時間を過ごした食事会でした。

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