


■メルロー天国、サン・テミリオン、ポムロール秋味というビールがありますが、このお酒苦味が強く、爽やかでキレがある、というより苦味と共に感じられるふくよかさが特徴です。 秋も深まり、やはり本当に赤ワインが恋しくなってまいりました。赤ワインも酸味があるタイプではなく、舌の上でねっとりとするやや渋味のあるワインが飲みたくなります。 今回はボルドーのいわゆる右岸(大西洋に向かって)の地域、しっかりした飲みごこちでヴォリュームのあるメルローを中心に栽培しているサン・テミリオン、ポムロール地区のお話です。
■メルロー天国とはこの地域は全体的に粘土質土壌ですので、土中の温度がなかなか上がりません。したがって 、メルローやカベルネフランのような早く熟すぶどうが向いています。 ポムロール地区の方がややメルロー種の栽培比率が高く、サン・テミリオンもメルローの比率も十分に高いものの、最近ではややカベルネ・フランの比率が増えています。 メルロー種はカベルネ・ソーヴィニョンに比べ味わいに収斂性(渋味のような口の粘膜を引き締める性質)が少なく、まろやかな印象を受けます。もし個人的なワイン会などでメルロー種を持ち込めば10人が10人美味しいとコメントするでしょう。 こんなに素晴らしいメルロー種の故郷リブルネ地区をスポットで取り上げてみましょう。
■シンデレラワイン=成り上がりワイン?突然ですが、シンデレラワインという言葉ご存知ですか? これは、変哲のないワインがある日突然脚光を浴びて、どんどん知名度と値段が上がり、今までの姿はなんだったの? って言われるぐらいに、高嶺の花になっていってしまうワインを言います。 これは、サン・テミリオン、ポメロール地区ではほめ言葉ですが、メドックではあまり呼ばれません。 例えばル・モンドットがいい例です、ほとんど目立たなかったのに96年ヴィンテージからは軽く10万円代の半ばで取引されていましたから。 シャトー・クリネシャトー・ボーソレイユシャトー・マグドレーヌシャトー・トロロン・モンドなどなど、挙げ切れないくらいです。
■安定して高品質 生産量のメドックメドック地区のシャトー達は1855年の格付けがあり、61ものシャトーが1級から5級まですでに格付けされていて、5級がある日3級になるなんてことはありえません。 ですから、この地区の1級5大シャトーなどの神話が崩れずに、現在でもトップの地位を保っています。またこれらメドックのシャトーの所有面積はかなり広く、ワインを市場に安定して供給できる強みもあります。
話を戻しましょう。ではポメロール・サンテミリオンはどうでしょう。
面積も生産本数も……こんなに少ないのです。 もちろんシャトーも小さく、だいたいが平屋かせいぜい二階建てといったところでしょうか(口の悪い評論家は鶏小屋なんて言っていますけど)。 でもワインの価格はメドックの物より高価で取引されています。 これは需要と供給のバランスで、需要に対して供給数が少ないために話題を呼んで、それがまた需要が増えるということが言えます。 このような市場にのったワインがシンデレラワインと呼ばれます(上の表のワインはもうすでに女王様クラスですが)。 これはひとえにこの地区の公式な格付け(サンテミリオンはありますが)がなく、過去や伝統に縛られず、また面積も狭いため、手間ひまをかけて自由なワインをクリエイトすることができるからと言えるでしょう。 ですので、この地区のシャトーは群雄割拠、虎視眈々とトップを目指しています
■ワインビジネスを成り立たせるプロデューサーたちまたこの地区の特徴として、ワインプロデューサーの存在を無視することが出来ません。 ワインプロデューサーとはワインの畑を基本的には持たずに、ぶどう園の主に雇われてワインを作る事を職業にする人たちのことをいい、ワインコンサルタントとも呼ばれています。 ぶどう園のオーナーはコンサルタントの指示通りにぶどう栽培からワイン造りまで行えば、たやすく安定感のあるワインを造ることが出来き、またコンサルタントの名前でもワインが売れやすくなり、まさに一石二鳥の効果が挙げられるのです。 この地区出身のコンサルタントとして名高いのは、ミスター・メルローことミッシェル・ローランです。彼はワインコンサルタントの走りのボルドー大学教授だったエミール・ペイノーの後継者として名を挙げています。 また若干コンサルタントとしては意味合いが違いますがシャトー・ペトリュスのオーナー、クリスチャン・ムエックス氏もミスター・メルローとして有名です。 彼らは各メディアを通しお互いにバリバリ批判しあっています。 樽のロースト香ムンムンのローラン(例えばヴァランドロー)に対してムエックスはローストをしない新樽を使い、ぶどうのキャラクターを生かしていくタイプで、彼は、色調的に樽の焦げが混ざり黒味がかったガーネット色のローランスタイルのワインを 『私の知っているワインは白ワインと赤ワインそしてロゼワインです、黒いワインなんて信じられません』『美しい女性はお化粧をしなくても十分にその人の美しさは表現できます』とキッパリ言い切ってしまいます。 一方のローランは 『僕は、少ない酸味とまろやかなタンニン分のぶどうを作るのが目的だ』『他のエノロジスト(醸造家)がどんな手法でワインを作ろうとも僕には関係ない』と、全く意に介しません。さすが! 栽培の学校からボルドー大学醸造科を出ているバリバリインテリな現場主義のお言葉でした。 この地ではムエックス対ローランの図式が完全に出来上がっています。 ローランは「目指せペトリュス」でワインをつくっていたのですが、ある日突然にシンデレラワインを連発するようになり、巨大なペトリュスの対抗勢力になっていたのです。 僕が彼に会った時に見た、いかにもぶどう畑をいじっていそうな無骨な手は、単にお金儲けでコンサルタントをやっているだけではないと感じました……。 彼のコンサルタント業は左岸メドック地区のオーナーからも声がかかり始めました。 説明が長すぎました、簡単に話を要約すると 1:メルローは栽培しやすい2:しかしシャトーの面積が小さい3:生産量が少ないので需要と供給のバランスが崩れ、値が上がる4:普通のシャトーはワインをより売れるものにする5:ワインプロデューサーを雇う6:いいワインが出来る7:シンデレラワインと呼ばれ高く売れるようになるもちろんこの地のワインはすべて高いわけではないですから、レストランでソムリエにメルローと注文するときに安くて美味しいのが欲しければこう言いましょう。 『メルローが好きなんですけど、ペトリュスは絶対高いし、あまり目立たないシャトーのもので何かありますか?』ここでソムリエがニヤリとしたらあなたの勝ちです。メルローは熟成をさせると、獣の血の香りとか、鉄っぽさや、湿った土のような香りが充満してきます。 冬の食材ジビエ(鹿、猪、兎、鴨)などと共に堪能していただけたらと思います。 |
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