


【目次】 1.世界で初めての原産地呼称ワイン。実はこのエリア? 2.ヒロ・サカテの「ミラノの街角から」 3.今月の祭り情報 4.今月のトピックス ・ピエモンテ州から悪天候の被害とワインの価格 ・畑の価格 ・トリュフの出来栄え ・オペラの季節 あとがき
【1】.世界で初めての原産地呼称ワイン。実はこのエリア?カルミニャーノというワインをご存知でしょうか? トスカーナ州のDOCG赤ワインのひとつです。名前は知っているけれど、なかなか口にしないワインではないでしょうか。 それもそのはず、このワインを生産しているのはわずか10社(!)。DOCGワインの中でも一番小さいエリアで、周りを山に囲まれていす。さらに特徴的なのは、イタリアワインなのにDOCG規定上にも外来品種であるカベルネ種の使用が義務付けられています。今回はそんなカルミニャーノのエリアをご紹介しましょう。
カルミニャーノのエリアはフィレンツェの21キロ西側に位置し、カルミニャーノ市、ポッジョ・カイアーノ市を含むフィレンツェ県とプラート県の一部のエリアに広がっています。 北東をムジェッロ山脈、北西をアペニン山脈、南をモンテ・アルバーノ山に囲まれ、北の山すそにはオンブローネ川が、そして南の山すそにはアルノ川が流れています。 エリア内の標高は200メートルから600メートルと幅があり一口に言えば大陸性気候となりますが、前述の通り周りを山に囲まれ独特の気候に恵まれています。土壌に関しては粘土質が強いのがこの土地の特徴となっていて、場所によっては多少砂が混じったり小石が混じったりしています。
そして現在でもローマ帝国時代に交わされた領主と小作人が804年に交わした畑などの契約の文献も、このエリア内セアノ村のサン・ピエトロ教会内に保管されています。 (この契約の土地は現在のワイナリー・カペッツァーナのエリアとされています) 1300年代になると街が整備され、貧富の差が生まれます。マルコ・ダティーニ(Marco Datini)は著名な商人で、このワインをシャルミニャーノ(Charmignano)と名付け、仲買人のラーポ・マッツェイ(Lapo Mazzei)に食卓用として購入させていたという記録も残っています。 この当時、すでにこのワインはほかのワインの4倍の価格で取引していたとされています。 そして時代はルネッサンスに突入。フィレンツェのメディチ家が、政治、文化と活躍をします。そんな時代の詩人ディティランボ(Ditirambo)はこの地を「トスカーナのバッカスのいる所」(Bacco in Toscana)と詠います。 メディチ家の娘、カテリーナは政治の一つの手段となりフランスに嫁いでいくこととなり、これによりメディチ家とフランス王国は信頼関係を結び文化の交流が行われます。イタリアからはフランス料理の元となる料理がもたらされ、フランスからはボルドータイプのワインがメディチ家にもたらされました。 このボルドータイプのワインを好んだメディチ家は、このカルミニャーノ・ワインにカベルネ種(カベルネ・ソーヴィニョン、カベルネ・フラン)をサンジョベーゼ種と合わせて造ることを命じます。 1716年7月6日、時のトスカーナ大公コジモ三世・ディ・メディチは世界に先駆けて、バンド(Bando)と呼ばれる、現在でいう原産地呼称、を制定。フランスのAOC制定よりも約150年も前のことでした。
これらのことにより、ここポッジョ・カイアーノの街にはメディチ家が狩を行うためのメディチ家の別荘やそのコレクションが多く所蔵されています。だから現在のDOCG規定にはカベルネ種の使用が義務付けられているのですね。 それでは今回はこのエリアの二つのワイナリーをご紹介しましょう。 一つはメディチ家のためのワインも生産していたことがあり貴族が経営しているワイナリー・カペッツァーナ(Capezzana)です。 もともとが貴族ですからワイナリー・オフィスのある中庭にはメディチとカペッツァーナの紋章が合わさったものが見られます。
現当主はウーゴ・コンティーニ・ブオナコッスィさんです。
1920年にフィレンツェの街から現在のカルミニャーノの街に移り住み、戦後の1945年にアレッサンドロさんは一切の仕事を息子のウーゴさんに譲り、この時からワイナリー・カペッツァーナの歴史は始まるのです。彼らの所有地は140ヘクタール、内ぶどう畑は92ヘクタール、140ヘクタールがオリーヴ畑、350ヘクタールが森、50ヘクタールに野菜を栽培し、彼らの住居はもちろん1600年代からの地下に続く熟成庫や最新式のオリーヴオイル精製所などもここにあります。 アグリトゥリズモとなっている建物には、まるで美術館のように絵画などの芸術品が溢れています。
彼らの生産するワインはシャルドネを使った白ワイン、ロゼのヴィン・ルスポ・ロザート・ディ・カルミニャーノ、赤ワインはミディアムボディーながらもバランスがとてもよくパスタから軽いお肉まで楽しめそうなDOCのバルコ・レアレ、しっかりと成熟したぶどうを感じられワインだけで楽しむよりも思わずお肉が食べたくなってしまうようなDOCGのヴィッラ・ディ・カルミニャーノ(カルミニャーノ)と、熟成したトスカーナ州のペコリーノチーズと相性が良さそうな熟成感たっぷりのトゥレフィアーノ・カルミニャーノ・リゼルヴァ、スーパートスカーナクラスのギアイエ・デッラ・フルバ(カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、シラー)と出荷までに5年の歳月をかけてゆっくりと造られる甘口ワインのヴィン・サントの7種類です。
訪問したときは収穫も7割方終わり、先が見えてきたとのことでした。天候のことを聞くと、ここは天候が他のエリアよりもとてもよく、他のエリアに比べるとぶどうの成熟度合いもとても早いので、雨が続き始めた頃にはすでに最高のぶどうは収穫されていたので問題がないのだそうです。 また、彼らはワイナリー経営の他に先にも書いたアグリトゥリズモも経営していて、そこでは料理教室も開催しています。伝統はそれとして大切にしていかなければならないけれど、それに固執していてはいけないと言い、これからはただワインを提供していくだけでなく、この土地をより良く知ってもらい、この土地の食文化と自分たちのワインを合わせて提案していきたいとのことでした。 さて、もう一つのワイナリーも所有面積200ヘクタールを誇る大手です。
……と言っても、カルミニャーノを精算している畑はたったの8.5ヘクタールのワイナリー・ファルネータです。彼らは3つのエリアのワインを同時に生産しています。そこで一番中心につくられているのがカンタガッロというキャンティ・モンタルバーノを生産するワイナリーです。 1970年代に都会の生活に飽き飽きしたおじい様のガリバルドさんが、このワイナリーのある場所を購入します。このときは26ヘクタールだけの自家用菜園としてワインだけでなく野菜なども生産していました。 そしておじい様がリタイアした後息子のラファエッロさんが後を引き継ぎます。 しかしこのラファエッロさん、おじい様とは反対に百姓暮らしはどうも性にあっていなかったようで、洋服の生地関係の仕事を行っているようです。そこでこのワイナリーと彼らのアグリトゥリズモを切り回しているのがラファエッロさんの5人息子の内の4人です。 長男のエンリコさんと次男のダリオさんがワイン生産関係を一手に、マーケティングは長女のエンリカさん、アグリトゥリズモは次女のセレーナさんが切り回しています。今回は収穫途中ということもあって、残念ながらカルミニャーノの畑は見学させてもらえませんでした。 しかし案内してくれたエンリコさんに彼らのポリシーをしっかりと聞くことが出来ました。最初の一つ目は「ワインはぶどうから造られ、そのぶどうは畑から得られる」ということでした。
「例えばぶどうの蔓の剪定一つにしても、ああいう風にこの土地にあった日照量に合わせてぶどうの葉やつるを落としてやれば、それだけ色濃く皮の厚いぶどうが出来、それが高品質のワインを生むことになる。また収穫量もコントロールすれば、多少天候が不順でもしっかりとしたものは造れるから、今年くらいの天候だったら問題ないね」 とレクチャーしてもらいました。 (ぶどうの葉の扱いについてはサテライト・パリ15号参照) 1991年よりワインを販売した彼らは、比較的新しいワイナリーです。そのことは畑からもうかがえ、そこには古い植林密度の広い畑は一つも見られませんでした。また設備も最高のぶどうから最高ワインを得るための考えられた設備を用意しています。
訪問した時ちょうど醗酵中のモストが乾燥して酸化するのを防ぐためにモストを皮にかけて湿らせるラバーレ(Lavare:洗う)を行っていたので、自分も上ってタンクの中を見せてもらいました。 (湧き上がってくるアルコールと二酸化炭素に思わずむせてしまいました) カルミニャーノでは造られていませんが、訪問したこのワイナリーではヴィン・サントも生産していす。ここでの陰干は通常のようにすだれのようなものに載せて干すのではなく、天井から二房づつつるして乾燥させます。
「カラーティは伝統的な樽だけれど、カラーティには良質の樫を使ったものはないんだよ。それに今は蓋がとてもよくなっているからセメントで封をする必要はない」
カルミニャーノに限っては良く洗練されたノーマルタイプとしっかり存在感のあるリゼルヴァタイプのみです。ここでワインを造る兄弟たちはおじい様の志どおり、ゆっくりとしたイタリアらしい豊かな生活を続けていこうと頑張っていました。
ワイナリー・カペッツァーナ 【2】.ヒロ・サカテの「ミラノの街角から」気候も「穏やか」を通り越して寒さを感じる日があるほどで、すでにコートを引っ張りだして着ていることもあります。 街のミラネーゼたちもすっかり秋冬の装いで、今年注目と言われるニットやブーツを取り入れたり、ミラノ定番のブラック系に加えて今年はホワイト系も人気です。ブラックはロンドンのパンクファッションをイメージさせるちょっぴりハードな、ホワイトはガーゼやレースをつかった柔らかいイメージです。 レザーなどのハードさに柔らかいものを組み合わせて、今らしさを楽しんでいる様子が伝わってきます。 さて、以前にもお伝えしたフィレンツェ、ウフィッツィ美術館出口部分計画は、その後、ごたごたが続いているようでときどき新聞に掲載されています。コンペによって選出された磯崎新の案によるものですが、やっぱり気に入らない人はいるもので、外国人にはルネッサンスの歴史などもともと根付いたものがない、などどケンカ状態。じゃ、始まっている工事は一体何をやっているのでしょう? 確かに私にとっても最初に磯崎新に決まったと聞いたとき、フィレンツェに彼の作風? と眉をひそめたのも確かです。選考員にも問題があるように思いますが、この街にとっては大事な一件、どんな結末を迎えるのでしょう。
【3】.今月の祭り情報今月もたくさんのお祭り、見本市がたくさんの街で行われます。一年でとっても気持ちの良いこの季節、街の中でショッピングもいいけれど、たまには地方の特産物を楽しみに小旅行に繰り出してみてはいかがですか?
注1:問い合わせの番号はすべて国番号39が省略されています。 注2:すべての祭りが大規模とは限らず、ただの村おこしの場合もあるので注意しましょう(笑)。
【4】.今月のトピックス■悪天候の被害とワインの価格ここのトピックスで悪天候を取り上げるのは今年何度目でしょう? ここトスカーナ州も収穫は昨年に比べて少しゆっくりではありますが順調に進んでいます。品質に関しては5年続いた良ヴィンテージですが、全てのワイナリーが良質のワインを生産できるかは難しいことのようです。 通常の質、もしくは多少良いヴィンテージとなり得る可能性がありそうなのは、モレッリーノ・ディ・スカンサーノを含むマレンマ地区、ブルネッロ地区、キャンティ・ルフィナの一部とのこと。 キャンティ・クラシコに関しては、9月中旬トスカーナ州はそれまでの天候の不順による被害対策のためにキャンティ・クラシコ協会にキャンティ・クラシコの通常の11.5パーセントというアルコールを今年に限って11パーセントまで認めたらどうかと持ちかけました。 これに対し協会側は、健全でより完熟したぶどうのみを使用して収穫量を減らすことによりキャンティ・クラシコの質は保て、さらにここ数日の晴天が実際ぶどうに良い結果をもたらし始めていると答え、今年の悪天候の被害は大きくないとしました。 ここよりも深刻な事態なのは北のエリアです。ピエモンテ州のエノテカ・ピエモンテより、今年の悪天候の被害とその価格の行方について発表がありました。2006年にリリースされるバローロ2002は全く作られないのではないかというような憶測が飛び交う中、これを収めるための被害情報です。 9月3日の雹の被害ではぶどう栽培総面積1456ヘクタールの内の350ヘクタールが被害を受けました。今年のバローロが造られないというわけではありませんが、品薄感は強まりそうです。品質に関してはやはり収穫が終わってみないと分かりません。また被害を受けていないはずの生産者の便乗値上げも懸念されていて、ピエモンテ・ワインを購入するのには注意が必要なようです。
■畑の価格賛否両論はあるとは思いますが、世の中にはワインを投資の目的として利用する人もいます。しかし現在イタリアではワインに対する投資ではなくワインを生み出す畑の方に投資をする人が増えていて、畑の値段が高騰しています。その値段を少しご紹介しましょう。 例えばトスカーナ州、キャンティ・クラシコは1ヘクタールあたり13万ユーロ(約1500万円)、一方イタリア最高峰のブルネッロを生産するモンタルチーノは約22万ユーロ(2500万円)、サッシカイアにおいては1アールあたり約16万ユーロ(2000万円)というから驚きです。 また、北の王様バローロ、バルバレスコもモンタルチーノと同じレベル、約2500万円、自分だったらシチリア州の約48000ユーロ(約600万円)でワインと野菜を作りながらのんびり生活するのも良いかな! なんて思いますけれど。えっ? そんなに金持ちかって? いえいえ、夢を見るのはただなのです。
■トリュフの出来栄え
通常トスカーナ産の良質のトリュフの価格は白が1キロ350ユーロ(約40000円)、黒が200ユーロ(24000円)となっています。トスカーナ州のトリュフはトゥーベル・マニャトゥム(Tuber Magnatum)と言う種類でトスカーナ州の表面積の約40パーセントを占める国有林から年間約8万キログラムが収穫されます。 トスカーナ州内でトリュフDOCゾーンとして指定されているのはサン・ミニアート村の丘、ムジェッロ村の丘、サン・ジョヴァンニ・ダッソ村のレ・クレーテ・セネージです。 また、このサン・ミニアート村ではヨーロッパ共同体の26万ユーロ(約3億円)の援助によって世界初のトリュフ大学が設立されました。 中部イタリアでもう一つトリュフで有名なのがウンブリア州です。ここではノルチョ・ディ・ペリゴールド(Norcio de Perigord)と呼ばれる品種が年間約1万キロ収穫されています。 ワイン祭りが落ち着く頃トリュフ祭りが始まります。 10月26、27日 ヴォルテッラ、モンタイオーネ 11月9から17日 サン・ジョヴァンニ・ダッソ 11月16、17日 ボルゴ・サンロレンツォ 11月10から24日 サン・ミニアート と続きます。 こちらもイタリア旅行に重なっている方は要チェックですよ!
■オペラの季節夏の5月音楽祭が終わり、冬の音楽シーズンが始まりました。フィレンツェのテアトロ・コムナーレにおいてプッチーニ作マノン・レスカウトゥ(Manon Lescaut)が始まっています。また来年明け1月にはやはりこれもプッチーニ作の蝶々夫人(Madama Butterfly)、貧しいイタリアの年末年始を演じるジャンニスキッキ(Gianni Schicchi)が、また今月20日からは小澤征爾指揮によるブリッテン作ピター・グリム(Peter Grims)が予定されています。 この季節フィレンツェを訪れる予定のある方は寒い夜を暖かい音楽で暖めてみてはいかがですか? 詳しい日程やオン・ライン・チケット購入はこちら http://www.maggiofiorentino.com
あとがき ちょっと今月は書きすぎてしまったようです……。ここまで読み着いた方も疲れたのではないでしょうか? ありがとうございました。 それはそうと、先月号で紹介したルッフォリ村のワイナリー・イルタリアートのウェブ・アドレスとメール・アドレスを載せそこねましたのでここで紹介しておきます。 ホームページのほうはまだ製作途中ですが、まもなく更新されるそうです。この地域のより詳しい情報など直接お知りになりたい方はイタリア語か英語でメールしてみてください。首を長くしてまっているそうです。 それでは、今月はここまで。チャオチャオ! |

