


【目次】 1.キャンティ・クラシコの中心、そこはルッフォリ 2.ヒロ・サカテの「ミラノの街角」から 3.2002年秋のお祭り情報 9月 4.今月のトピックス ・雹の被害 ・収穫情報 ・猪の被害 ・キノコの季節
1.キャンティ・クラシコの中心、そこはルッフォリキャンティ・クラシコというエリアはキャンティ山脈を含むその裾野に広がるエリアです。南北に走るこの山脈をDOCGでは全て認めています。その中でも1、2を争うほど標高が高く土壌的にも特徴的なエリアがこの「ルッフォリ」。 ここは標高約300メートルから650メートルにわたる小さなエリアで、小区画性気候とその特殊な土壌を持ち合わせ、3つしかないワイナリーはどれも秀逸なワインを生産しています。 3つのワイナリーとは、 ・クエルチャベッラ(Querciabella) ・ポデーレ・スカレッテ(Podere Scalette) ・イル・タリアート(Il Tagliato) の3つです。 クエルチャベッラというワイナリーはミラノの大手資本が運営するワイナリーで、ワインの種類もシャルドネを使ったブルゴーニュ風のものをはじめ、キャンティ・クラシコ、スーパートスカーナと、どれも品質の高いものを生産しています。 さて今回取り上げるのは、このクエルチャベッラよりもさらに山道を登ったところにあるポデーレ・スカレッテとさらにその山奥にあるイル・タリアートの2つです。 まず、この地域の特徴とはどのようなものか書いておきましょう。 先にも書きましたが、このエリアは標高がとても高いところにあります。ワイナリーのテラスからはフィレンツェの街も見ることができ、さらに母屋の高いところに登ると、シエナやサン・ジミニャーノの街も眺めることが出来ます。
通常トスカーナ州では、メルロー種の収穫は白ぶどうの後、赤ワインの一番最初におこなわれ、そして最後にサンジョベーゼ種で締めくくられます。 しかしこのポッジョ・スカレッテでは、サンジョベーゼ種の収穫の後にメルロー種を収穫します。要するに通常のワイナリーよりも2ヶ月ほども遅い収穫となるわけです。 これはこの風のある乾燥した気候が、ぶどうを腐らせることなくゆっくりと成熟させる明らかな証明です。 もう一つの大きな特徴は土壌にあります。イタリア語でスケレートロ(Scheletro)と呼ばれるものです。主に砂礫岩の混じる砂質の土壌です。特に表土には砂礫岩が多く、夜間気温が下がったときでも岩が蓋の役目をして地面の温度を逃がしません。
それでは、ポッジョ・スカレッテとイル・タリアートの二つのワイナリーをご案内しましょう。ポッジョ・スカレッテは先のクエルチャベッラの更に500メートルほど山道を登ったところにあり、標高差にすると約100メール高い位置にあります。 オーナーはユーリ・フィオーレ(Juri Fiore)さんでワイン醸造も一手に手がけています。
また彼らのワイナリーのテースティングルームはかつてダンテさんが勉強した小学校の教室だそうです。
1種類はサンジョベーゼ100%のイル・カルボナイオーネ(Il Carbonaione)、もう1種類は、一般には販売されておらず『エノテカ・ピンキオーリ』というレストランからのオーダーで造られているカベルネ・ソーヴィニヨン種とメルロー種で造られるピアントナイア(Piantonaia)の2種類だけです。
ワイン造りはプレフェルメンタツィオーネ・フレッド(※1)や、リモンタージュとフォッラトゥーラ(※2)を丁寧におこなうことで高品質のワインを生産しています。 他にもいろいろな方法をワイン造りに生かしたいのですが、フォッラトゥーラという自分の手でおこなう作業が自分でワインを作っているという実感を与えてくれて、体はつらいけれどやりがいのある作業を機械化せずに行っているそうです。
そのうえ醸造設備が生産量に対して小さくなってしまい(瓶内熟成庫は、扉を開けると扉の向こう30センチまでワインがぎっしりと積まれていました)、「新しい醸造所ができたら力仕事は辞めるかも」なんておっしゃってました。その他に、ここでは瓶詰め中にワインを空気に触れさせない機械や真空状態でコルクを打つ機械など全てのことに気を配ってワインを造っています。
ここはポッジョ・スカレッテの山道をさらに1キロほど進んだ、本当に本当に山の中にあります。 周りはひとっこ一人いない、いるのは狸と猪くらいではないかというような場所です。ワインを造っているのはレオナルド・マゾーニさんとそのお父様。
お父様と二人きりで道を造り、家を建て、電気、水道、ガスを引き、森を切り開いて畑を造り、小さながらも醸造所を造りあげ、この春バルツェ・ディストリチェ(Balze D'Istrice)のファーストヴィンテージをリリースしました。
(ワイナリーの近くまでは普通の乗用車でもいけますが、そこから先は道なき道、いつも彼が迎えに来てくれます。そんな彼らの私道の入り口には「この先出口なし」の標識があります)
フィレンツェに住んでいる頃、地理学者という仕事のかたわら、趣味で醸造学を勉強していて、この地に移った時にその趣味が生きることになったのです。何しろ畑に関してはほとんど一人で切り開いたようなもの、たったの1.2ヘクタールしかありません。
この畑から造られるワインはたったの3,000本です。だから醸造設備もとても小さくコンパクトにまとめられていますが、デレスタージュ(※4)やアルコール発酵中の糖度の変化や酵母の活動の様子など、できる限りのデータに基づいた醸造と最新の技術を取り入れています。
醸造に関してはいくら机上で勉強したからといってすぐに実践できるものではありません。そんな彼を助けているのがユーリさんです。ユーリさんのアドバイスにのっとり最高のぶどう栽培、収穫、醗酵、熟成、エチケット貼りと全てが手作りで行われています。 まだまだ若いできたてのワイナリーのオーナー・レオナルドさんのワイン造りで一番重要なことは、自分の考え方、精神の持ち様ということです。 素晴らしいワインを造るために不必要なものはない、いかに集中して畑を手入れし醸造の変化に気を配り、醗酵の様子を見極める。そしてそこに自分の理想をぶつけていき、できる限りの努力をいつも忘れないという考え方を持ち続けるということです。 このように小区画で2つしか生産者はいませんが、これからも目を離せないエリアの一つであるルッフォリでした。
※1.プレフェルメンタツィオーネ・フレッド:アルコール発酵前にモストを低温で一定期間保存しておくこと
【2】.ヒロ・サカテの「ミラノの街角」から今月のトピックスでもイタリアの雹の被害について挙げられていますが、コモ湖、マジョーレ湖湖畔の高級リゾート地周辺でボコボコになった車がニュースに写っていたくらいですからその威力のすごさもわかります。 また、ヨーロッパ全土の大雨による被害はテレビで目にされた方も多いと思いますが、今年は歴史的にも重要な大都市での被害も大きかったために、世界中で大きく報道されました。ところが、実は毎年9月頃に多雨による川の氾濫が北イタリアに深刻な被害を及ぼしていて、その中でも自然の川がないミラノだけが直接的な被害を免れているだけなのです。 水につかった街の映像を目にするたびに思い出すことがあります。語学修得のために最初にフィレンツェでステイしたファミリーが語って見せてくれた記録ビデオで、1966年の大洪水のものです。 アルノ川の氾濫で街の中心の一番低いサンタ・クローチェ地区では5.8メートルも水につかり、花の大聖堂も洗礼堂も水の上にぽっかりと浮いたようになり、ゴミも流木も一緒に渦巻いて、建物にぶつかって破壊し、とても悲惨な出来事がフィレンツェの人々の記憶に刻まれています。 「3階だから寝床は確保されているものの、食材の流通も断たれ、水の底から響いてくる車の防犯アラームの音が、それはもう恐ろしくてふとんをすっぽりかぶってもなかなか眠れなかったのよ」と話すおばさんの話も強く印象に残っています。 今でもこの名残りを街で見つけることができます。それは壁に埋め込まれた小さなプレート。ハガキ大ほどのサイズに1966の数字と波線が入っているシンプルなものですが、「ここまで水が来ましたよ」というサインになっていて、平たんに思われるフィレンツェにこんなに高低差があるのか驚きます。ぜひ、通りの名前を見るために見上げたときなどに一緒に探してみて下さいね。
【3】.2002年秋のお祭り情報 9月今年も食いしん坊にはたまらない秋がやってきました。秋と言えばやっぱり祭り。今年も少しだけ食いしん坊のためのお祭りをお知らせしておきましょう。 注1:問い合わせの番号はすべて国番号39が省略されています。
【4】.今月のトピックス■雹(ひょう)の被害先月も少し書きましたが、7月の末に場所によってはテニスボール大の雹が降りました。その続報を少しお知らせします。 被害が大きかったのはヴェネト州のバルドリーノ地区、ヴァルポリチェッラのクラシコ認定地区、ロンバルディーア州のガルダ湖畔、フランチャコルタ地区です。 特に有名ワイナリーの一級畑の被害が大きいようで今年の収穫は早くもあきらめ気味、来年へと気持ちを切り替えているところもあります。トスカーナ州に関しては北部の地区よりも、雹の大きさも小さく、壊滅的な被害はなかったようです。 今年はこの雹だけでなく中南部は日照りの被害もありました。政府は援助金のための審査を始めるとともに、特に被害の大きかったヴェネト州、フリウリ・ヴェネツィア州、リグーリア州、ピエモンテ州、ロンバルディーア州、エミリア・ロマーニャ州のそれぞれの州知事とも話し合いを始めました。 さらに「これらの天災に関しては来なければよいが、いつ来ても仕方のないものとして常にその心構えをするように」と生産者と政府自らに注意を促しました。この被害の出た日は本当に強い雨で、あまりの雨脚に自宅の窓から思わず雨に見とれてしまうほどでした。
■収穫情報トスカーナ州の収穫情報です。いよいよトスカーナ州でも収穫が始まりました。8月末トスカーナ州南部のワイナリーを訪ねたときに、白ぶどうはもちろん、黒ぶどうの収穫をまもなく始めようとしてるところもありました。 南部の地域は例年並か比較的早めのところが多いようです。 一方、キャンティ・クラシコのエリアは悪天候のために1週間から10日ほど昨年より遅くなるようです。先のコラムで、雹の被害はさほど大きくないことをお知らせしましたが、雹の被害はそれほど大きくないものの、6月の猛暑が今年のぶどうのキャラクターに一役買っているようです。 今年のぶどうはこれらの悪天候のために実よりも皮のほうが質の良いものにでき上がっているということでした。つまりアルコール度は中程度で、香りの豊かな色調のしっかりしたものになる傾向にあります。 しかしながらぶどうのできはここからの天候が勝負となるため、空とのにらめっこはもうしばらく続きます。 キャンティ・クラシコの収穫情報と一緒にクローンについての協会のスタンスが発表になりましたのでお知らせしておきます。キャンティ・クラシコ協会では100近くもあるサンジョヴェーゼのクローンの種類を限定する運動をおこなっています。協会に選ばれているクローンはより天然のものに近く果実の出来が良いものとした指標をもって薦めています。
■猪の被害
昔、何かのテレビ番組でサツマイモを猪の被害から守ることを見た覚えがありますが、ここトスカーナ州では獲って食べてしまえるほど猪はたくさんいて、その被害もバカにならないものになっています。 現在の一番効果的な対処法は、畑の周りにちょうど猪が畑に入ろうとすると体に触れる高さに電線を張ってそこに微弱電流を流してぶどうの実を守るというものです。この方法を用いるとぶどうが実になって糖度があがり始めた時期から電流を流しつづけなければなりません。 そのコストは100リットルに対し400ユーロ(約48,000円)、ボトル一本に換算すると360円! 高級ワインならいざ知らず、低価格のワインにとっては痛い出費となってしまいます。 この問題に対してはキャンティ・クラシコを含む県では常に議論が交わされています。猪の出没する山は大きく分けて2つに分けられます。1つは農業、観光で経済活動に携わる人間が利用する地域、もう1つは人が入らず開拓を制限されて特徴的なエリアの2つです。 トスカーナ州は狩りをする人が日本よりも多いように思われます。当然、先の地域は人にあたってしまう危険もありますので狩りは出来ませんが、後者のほうは狩りのエリアとしても認められています。 しかしながら猪の被害が出るのは人が活動する方というわけで、この狩人たちを使って猪退治ができないかとも考えられています。狩りを使った方法は、現状では市に雇われた狩人がいくつかの地域を分担し常に待機しています。 ワイナリーから報告、要請が入るとその日から1週間退治のために出かけるそうです。しかしながら狩猟目的以外の猪の狩りは厳しく取り締まっているのも現状で、まだしばらく猪との知恵比べは続きそうです。
■キノコの季節
イタリアにはキノコ狩り狂いの人がいて、その人たちのことをフンゴマニア(Fungomania)といいます。フンゴマニアは人が知らない自分だけのキノコポイントを持っていて、常に他の人間よりも多く収穫することを狙っています。今トスカーナ州の山の中はそんなフンゴマニアで溢れかえっています。 イタリアのキノコといえばポルチーニ、その他にも色々な種類のものがありますが(オーヴリなど)、フンゴマニアが狙うのはやはりポルチーニです。 このキノコ狩り、市役所に届出をすれば誰でも参加できます。といっても、観光客の方は観光に用意してあるところで採取しなければなりません。この届出の時点で税金を取られるのでご用意をお忘れなく。 採集できるキノコは一人3キロまで。さらにポルチーニに関してはまだ生えたてのちびポルチーニ(2センチから4センチ以下のもの)は収穫してはいけません。更に観光客の方は年内の12月31日までしか採集できませんのであしからず。 一方住民票を持っている方は、どこの場所でも採集することが出来ます。ただし私有地は無断進入になるので、私有地でキノコ狩りをする時にはオーナーのかたに一声かけましょう。またオーナーによってはキノコ狩り料を取られるかもしれません。値段を聞いて安いところを選ぶのも1つの手段です。 今年は天候のせいでたくさんのキノコが山の中には生えているようです。そのため、笑い茸や毒キノコにあたってしまう人も少なからず出ています。もしキノコ狩りをしていて、食用かどうか分からないキノコに出会ったら、専門家の方の意見を聞いてから調理しましょう!
あとがき いよいよ来月は10月。秋も深まり収穫のほうも大詰めになっていることでしょう。秋になって食事が美味しくなるのはいいのですが、ベランダのバジリコ君とシソ君の元気が次第になくなってきました……。 どなたか冬でもベランダのプランターで栽培できて食べられる実がなる植物知りませんか? |

