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6月は衣替えした夏物を全部着つくしてしまうほど暑かったのに、7月に入り涼しさが戻ってきてしまいました。涼しいというより夜は寒いくらい。中旬にはイタリア北部では大洪水、南部では深刻な水不足、ここトスカーナでも雨の日が続きこのまま秋になってしまうのではと思ってしまったくらいでした。 やっと最近夏らしい日差しが戻ってきた、ヴァカンスシーズン到来中のフィレンツェより、8月号です。 |
【目次】
1.父の土地を家族で育てたワイナリー「ボスカレッリ」
2.ヒロ・サカテの「ミラノの街角から」
3.今月のトピックス
・シチリア給水宣言
・ラモレ地区のサンジョベーゼが最優良
・イエット・ピッツァが発明されました!
・フィレンツェ市内の新しいタクシー
【1】.父の土地を家族で育てたワイナリー「ボスカレッリ」
さあ、今回もドライブしましょう。今回はモンテプルチアーノの「ボスカレッリ」というワイナリーにご案内します。いつものフィレンツェ・チェルトーザICからA1にのりローマ方面に進みます。
今回は前回モンテプルチアーノを訪問したとき(サテライト・フィレンツェ006号)よりもひとつ先の「キアンチャーノ・キウージ」という出口からモンテプルチアーノの街を目指します。
このキアンチャーノという街は飲泉(飲む温泉、イタリアでは日本のように湯につかる温泉と飲む温泉の2種類があります)として有名で、高級リゾート地としても有名です。
華やかなキアンチャーノの街を抜け、両脇に広いなだらかな丘が広がる山道をモンテプルチアーノの街めがけて車を走らせます。今回の「ボスカレッリ」というワイナリーがあるのはモンテプルチアーノの街の東5キロにある、チェルヴォニャーノという村です。
この村へは、まずアックアヴィヴァという街を目指し、そこから小さな側道を入っていきます。
少し分かりにくいのでアックアヴィヴァの街に入ったら減速して注意深く進みましょう(実は道に迷って約束の時間に30分も遅れてしまったのです)。両脇にぶどう畑が開け、小さな森の手前の看板を左に入って行けばそこがワイナリーです。
■ワイナリー、ボスカレッリのスタート
このワイナリーのある地は現オーナーのパオラ・コッレーディさんの生まれたところ。彼女はジェノヴァ人のデ・フェッラーリさんと結婚してジェノヴァに移り住みますが、週末ごとにお父様のエディージオさんに会いにここに遊びに来ていました。
1962年にエディージオさんは15ヘクタールの畑を購入します。そしてエディージオさんは最初の1ヘクタールだけ自分でぶどうの木を植え、残りをパオラさんと旦那様で植えられました。最初のワインは当然ながらとても販売できるようなものではなく、全て自分たちで飲んでしまったそうです。
その後67年にヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノの名前のついたワインを初めて800本のみ造ります。そして70年に世に販売できるワインが生産できるようになり、現在のワイナリー・ボスカレッリが誕生することになります。
お父様が亡くなり、ワイナリーは夫のデ・フェッラーリさんが引継ぎますが、若いうちに亡くなってしまい結局その妻のパオラさんがワイナリーを引き継ぐことになります。
醸造家(マウリツィオ・カステッリ氏)など、他地域の優秀な方たちの協力を得て、質の低い大量のワインでなく、量は少ないが質の高いワインを造るという哲学にのっとってヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノで最高峰のワイナリーの一つとなっていったのです。
■さてワイナリーを見学です。
まずは畑から。まだ植えられて間もない木や、それよりも少し背丈が伸びたお兄さんの木が植えられた畑もあります。
聞いてみると、彼らの最上級ワインのリゼルヴァ・タイプには樹齢10年から35年のものが使われていて、最初にエディージオさんが植えた木は35年を過ぎたので3年程前から植え替えを始めているそうです。
せっかく伸びた根っこを最初から面倒を見直し育てなおすのはもったいない気もしますが、これも彼らが求める良質なぶどうを得るためです。更にこのワイナリーではイタリアではちょっと珍しいガメイ種も実験的に植えられているようです。
いろいろと言われる外来品種ですが、そのことについて聞いてみると「伝統を失うのはいけないことだけど、より上質のワインとその土地の可能性を追求することはしなければいけないこと。いくつかの畑にはそういった品種が素晴らしい結果を出す区画もあるはずだから」と、頼もしい。
醸造所内は小さな机、この地方の円錐台形のTino(ティーノ)と呼ばれる醗酵槽、セメントタンク、熟成用の大樽、小樽とそれぞれが小さな部屋に所狭しと置かれています。

この伝統的なティーノ型の樽はヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノ、リゼルヴァ、スーパートスカーナに用いられ、それ以外のものはセメントタンクで醗酵を行います。
樽の置かれた熟成庫はエアコンでしっかり温度、湿度とも管理されていました。


■ひととおり見学した後は試飲です。
最初はテーブルワインクラスのデ・フェッッラーリ2000(De Ferrari:サンジョベーゼ種90%、カナイオーロ種10%)です。
木の樽での熟成は一切行われていないワインです。一番ベースとなる一番下のクラスのワインですが、しっかりとぶどうが熟したことを感じられ、最初からこんなにしっかりしたワインでいいの? と思ってしまうほどです。
続いてヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチアーノ99(サンジョベーゼ種85%、マンモロ種、カナイオーロ種、カベルネ・ソーヴィニョン種)です。
果実の味わいは前のものと同様しっかりと感じられますが、そこに大樽での熟成とカベルネ・ソーヴィニョン種などが加わり複雑味のあるものとなっています。でも、まだまだ元気一杯のやんちゃ坊主です。これからの熟成が楽しみです。
そしてリゼルヴァタイプのヴィーニャ・デル・ノーチョ99(Vigna del Nocio:サンジョベーゼ種85%、メルロー種8%、カナイオーロ種)。
1年長い樽の熟成が味わいをひとつにまとめ、とても素晴らしい状態になっています。複雑味と熟成感がひとつになって、思わず「うーむ」と唸ってしまいました。
最後はスーパートスカーナクラスのボスカレッリ99(Boscarelli:サンジョベーゼ種50%、メルロー種、カベルネ・ソーヴィニョン種をあわせて50%)です。
サンジョベーゼ種の味わいなれた酸味にカベルネ・ソーヴィニョン種、メルロー種がワインを個性的にそしてスパイシー感を与えています。ヴィーニャ・デル・ノーチョよりまだまだ若々しい渋みは感じられますが、また違った楽しみがそこには感じられます。
この2本は好みが別れるところかな、なんて思いながら最後にオリーブ・オイルをスプーンでひとなめ。トスカーナの個性をしっかりもち、酸味とオイル分がバランスよく味わえます。このオイルだったらサラダでも料理の仕上げでも、パンにちょっとかけても何でも美味しそうです。
「良質のワインは最高のぶどうから造られる」という言葉をモットーにお父様が購入したこの土地の畑をいたわり、そして研究し家族のチームワークで最高のワインを造ろうとしているのが印象に残るワイナリーでした。
【2】.ヒロ・サカテの「ミラノの街角から」
昼間の言葉通り、焼けつくような日差しがようやく落ち着いて早めの夕食を済ませる頃、街では様々なイベントが準備されたくさんの人でにぎわいます。
イタリアにはローマのコロッセオに代表される円形劇場が現在も数多く残り、夏のイベントで野外劇場としてコンサートや演劇に利用されることが多いのですが、ここでその中でも有名なもののひとつ、ヴェローナの野外オペラを紹介しましょう。
ヴェローナといえば、4月のヴィーニ・イタリーが催される街。また、ロミオとジュリエットの舞台としてジュリエットの家とあのバルコニーがあることでも知られている、石畳の広場が素敵な中世の雰囲気を残す街です。
円形劇場の規模は大小さまざまなものがありますが、この街にあるのはコロッセオに良く似た大変大きなもので(オペラでは2万人分もの席が用意される)、毎夏7月初旬から9月初旬にかけての野外オペラの開催期間中は、遠方からもたくさんのファンが駆けつける重要なイベントです。
始まる時間が21時頃のため、終演時間も遅く、宿を取っておくのが一番いいのですが、当然込んでいるためにやむなく日帰りの場合はミラノからだと専用バスが出ています。
僕が見たのはジョゼッペ・ヴェルディ三大代表作の一つ「アイーダ」。
スエズ運河の開通を記念して作られたのに、式典に間に合わなかったという「いわく付き」でありながら、合奏やバレエもあるエンターテイメント性の高い作品のため、初心者でも楽しめるものとなっています。
また、ワールドカップの日本代表の応援のために、皆で声を揃えたあのメロディがこの中の「凱旋行進曲」であるといえば、話題に上がったことを覚えておられるかたも多いことでしょう。
直前まで小雨が降っていたのが嘘のように、開演のドラが鳴るとピタリとやんで、安席でありながら正面位置だったためにダイナミックな舞台を楽しむことができました。
もう一つ、楽しむための重要なポイントは、あらすじを知っておくこと。
イタリア人でも聞いて理解をすることができないほど古語の台詞であるため、また、野外だから台詞が載っているパンフレットを買ったとしても音が逃げていて見るだけで理解するのは難しいのです。
僕もやったように、オペラのあらすじはインターネットで閲覧することもできますから、ぜひチェックしてから出かけて下さい。
中世から残る遺跡で見るオペラ。劇場の階段状の部分など形状をそのまま取り入れた演出もすばらしく、帰り道、濡れた石畳に映る街頭の光が幻想的な物語の世界にそのまま酔わせてくれました。
【3】.今月のトピックス
■シチリア給水宣言
先月号から書きつづけているように、6月は猛暑、7月は悪天候と天候不順なイタリアですが、この不順さはまだ続いています。北部は家が流れるほどの大水、南部は日照りとなっています。シチリア州では給水車の映像がテレビでは放映されています。
イタリア醸造家協会はこの日照りのため、ぶどうの生育が狂うとして木に給水をすることを決めました。現在シチリア州のぶどうの状態は粒が順調に成長し色づき始めていて、この段階での水不足はぶどうにストレスを与えることになり、今後のぶどうの成熟過程において障害を与えてしまいます。
一般にぶどうの畑は水はけがよく肥えていないほうが良いとされますが、ぶどうの成熟期の水不足は決して良い結果は与えないのです。つまり人為的にぶどうに影響を与えるのではなく、ぶどうの働きを手伝う程度(ストレスを持たせない程度)灌漑は必要とされるのです。
シチリア州ではすでに少しの時間だけですが、15ミリから30ミリ程度の灌漑が行われたそうです。通常シチリア州では8日から10日おきに行い、ぶどうの木のストレスをなくしています。
南部の一部ではワインはこのストレスの影響を多大に受けていて、出来はあまり良くないとされ、しっかりした価格と品質管理を行うことが決まっています。しかし水不足に悩んでいるのはぶどうだけではなく、人間も水不足に陥っているため、人間の経済効果を保護するかどうか灌漑の水の量も大きな問題となっています。
最後に現在大きなこの水不足の被害を受けているのは、パンテッレリア島のぶどうだそうです。
■ラモレ地区のサンジョベーゼが最優良
約10年前から始められた「キャンティ・クラシコ2000計画」(キャンティ・クラシコのエリアとサンジョベーゼという品種を見直すために、キャンティ・クラシコ協会を中心に始まった計画)の「ちょっとした結果」が発表されました。
この計画において植えられたキャンティ・クラシコエリア内のぶどうの出来で、ちょうどエリアの真中にあたるラモレ地区のぶどうが一番良い結果を出しているとされました。
今回の計画で植えられた17種類のクローンのうち、このエリアでは2種類が「優良」と認められ、他の2種類もその結果を研究所で分析中とのことです。
ラモレ地区では遺伝学的に
Precoce(早熟)
Forte(強い)
Polveroso(粉状)
という3種類のクローンに分けられ、特にこのクローンはポリフェノールと糖分の含有量が多いとされました。
このラモレ地区はエリアの中でもかなり標高の高いところに位置し、他のエリアからも少し閉ざされています。
そのため、出来上がったぶどうの性格は昔ながらのサンジョベーゼの印象が強いとも言われています。
この結果において、キャンティ・クラシコの品質向上を見込むことは当然ですが、エリアの経済にも効果があがるのではないかと期待も膨れています。
■ダイエット・ピッツァが発明されました!
美味しいものはいつでも食べたいけれど食べれば太る、これが宿命です。それでもピッツァを食べたいかたのために、一番カロリーの低いピッツァが発表されました。
マルゲリータと呼ばれる、ピッツァ生地にトマト、モッツァレラチーズ、バジリコをのせて焼いたものですが、生地の材料の配合を研究しここでカロリーを減らし、トマトはフレッシュの生トマトを使い、オリーヴ・オイルとバジリコをのせたものです。
通常のマルゲリータは100グラムあたり300キロカロリーだそうですが、このピッツァだと240キロカロリーですむとか。
残念ながらこのピッツァまだリミニで行われたピッツァ祭りでしか食べらなかったそうで、やっぱりイタリアに来たらダイエットを考えずに、食べたいものを食べたいだけ食べて楽しむほうがいいようです。
■フィレンツェ市内の新しいタクシー
フィレンツェに新しいタクシーサーヴィスが出来ました。その名もタッソ(Tasso)、自転車の後ろにニ人乗りの座席をつけたものです。このサーヴィスは誰でも無料で利用でき、これからが注目されています。
現在フィレンツェの他にベルリン、ミュンヘン、ニュー・ヨーク、ロサンゼルスなどでも行われています。通常ピアッツァ・レップブリカ(共和国広場)、ピアッツァ・リベルタ、サンタ・マリア・ヌオヴァ病院の決められた乗り場からしか乗れません。
但し高齢の方と体が不自由なかたは電話予約を受け付けています。利用できるのは歴史中心街の一部とされていて、自転車ですから雨などで道路の状態が良くない時や安全運転が保証されないときのサーヴィスは受けられません。
このサーヴィスは公害もなく景色をゆっくり見ながら街を動けるのが売りになっていますが、それだけでなく、許可証を持っていない車はやむなく歴史的中心街の外に車を止めなくてはなりません。その車から中心街への移動手段の一つとしても利用できることも大きな利点の一つとなっています。
収入はこの自転車に広告を載せるための広告収入から得ていて、こぎ手の学生のアルバイト代もここから捻出されています。観光で歩きすぎた時の臨時の手段、気軽な街の観光などに一度利用してみてはいかがですか?
【あとがき】
街の中はすっかりヴァカンス気分一色です。というか、パリのいずみさんも書いていましたが、車の量も減って駐車には苦労しなくてすむのですが、いつも騒がしいくらいのイタリア人の大声もなくなって何となく寂しいイタリアです。
この静けさにこのひと月で慣れた後のヴァカンスの翌日、イタリア人社会の騒がしさが戻ってくる日を想像すると、何となくため息が出てしまいます。ハァ。
今月も恒例の、バジリコニュース!(笑)
最近普通の土から細切れの木のくずに変えてみました。天候不順のせいか、土のせいか元気がないようです。やっぱりバジリコ君の家は木じゃなくて土がいいようです。
《横田ソムリエから報告メールがありました》
8月6日のイタリア、全国的に天候が崩れました。
ピエモンテ州、ロンバルディア州、フリウリ州では「壊滅的な大雨と雹による被害も出ているところがある」とのことです。
トスカーナでも、場所によってはテニスボールほどの雹が降ったところがありました。その日から3日ほど車で畑を見て回りましたが、簡単に見て回ったところでは大きな被害は見つけられませんでした。
しかしワイナリーの友人たちの話によると、被害を受けたのはモンテプルチアーノからフィレンツェ方面にかけてのエリア、キャンティ・ルフィナのエリア。壊滅的な被害を受けたところがあるようです。
イーエックス・ワインでは引き続き、横田ソムリエからこの天候に関する報告などがあり次第、メルマガやスタッフ日記などでご紹介していきたいと思っています。(イーエックス・ワイン)






