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独立記念日も終わって、夏休みムードの高まるカリフォルニアです。普段は天然クーラーでひんやり、ニコニコの北カリフォルニアですが、7月9日からは数日間にわたり猛暑がやってきました。英語でHeatwave(ヒートウェーヴ)といいます。 気温42度。体温より高い乾燥した熱風がまるで砂漠のように大気に停滞し、畑巡りを予定していた私も急遽、涼しいセラーの訪問に変更。 今月は、年に1度のソノマ・カウンティ最大のワイン祭り「ソノマ・カウンティ・ショーケース」の様子もお伝えします。 |
【目次】
1.オーガニック、そしてバイオダイナミックにこだわるワイナリー
2.ソノマ・カウンティ・ショーケース
1.オーガニック、そしてバイオダイナミックにこだわるワイナリー
■まずはオーガニック栽培についてを復習
人工的な化学肥料、殺虫剤も除草剤も使わない栽培法。自然淘汰の法則にしたがって、益虫は害虫を駆除し、土の中には微生物の繁殖により有機成分が高められます。
オーガニック栽培とは、このサイクルを通して、より健康的な自然とのバランスのとれた栽培を行うこと。……なんてちょっと大げさに聞こえますか?
オーガニック(有機農法)は、酪農、野菜、果物、もちろんぶどうの栽培にも応用されています。こちら(アメリカ)のスーパーマーケットでもオーガニックコーナーは一般的になりました。
メンドシーノ・カウンティとオーガニック栽培を代表するワイナリーといえば、ホップランドにあるフェッツアー・ワイナリー。フェッツアー・ワイナリーの創立者であるフェッツアー家が機動力となり、メンドシーノ・カウンティは今ではすっかりナパやソノマに続くワインカントリーの一つとして知られるようになりました。
ホップランドはその名のとおり、ずっと昔、ぶどう栽培が始まる以前は、ビールの原料になるホップがたくさん栽培されていた土地です。そうそう、メンドシーノはビールの産地としても有名なんです。レッドテイル・エールで知られるメンドシーノ・ブリューアリーやアンダーソン・ヴァレーのブーンヴィル・ビールなど、ちょっとした地ビールブーム。
■ホップランドの話が出たところでついでにご紹介しましょう
こちらは、先月、ホップランドにオープンしたばかりのホテル、ホップランド・イン。1890年にホテルとして建てられたこの建物は、地元の木材産業の衰えとともに人足が絶え一時期は個人の住宅として使われていましたが、フェッツアー家をはじめとする地元の有志が集まり、再度ホテルとして誕生したわけです。
ホテル内には、メンドシーノ・カウンティのワインと食材を集めたレストランがあり、西部劇のシーンに出てきそうなバーのカウンターは、マホガニーの落ち着いた雰囲気のなか、オープニングしたてにも関らずたくさんの観光客で賑わっていました。
ホテル・ホップランド・イン
http://www.hoplandinn.com/
■オーガニック栽培へのこだわり
フェッツアー・ワイナリーは、「サンダイアル」というフレンドリーなシャルドネ、そしてちょっと甘口のゲヴュルツトラミナーが有名です。両方ともお値段も手頃。きりりと冷やして夏のパーティにはもってこいのワインです。兄弟姉妹合わせて11人というフェッツアー家は、故バーニー・フェッツアーさんが1968年からワインを造り始めました。
三男のジム・フェッツアーさんを社長に、この家族経営のワイナリーはあっという間にメンドシーノ・カウンティの名を全米に広めました。今ではブラウンフォーマンという大きなウィスキーの会社(ジャックダニエルといえばピンときませんか)がオーナーになりましたが、創立時からの健康的な明るいフェッツアーのイメージをより大きなスケール展開してくれています。
オーガニックという観点からフェッツアーのワインでもう一つ必見なのは、ボンテッラというワインです。ホップランドの西側にあるボンテッラ・ヴィンヤードでは100%オーガニック栽培のワインを生産しています。ボンテッラ・ワインのラベルはよく見るとOrganically Grown(オーガニック栽培のワイン)と記載されています。
一般にアメリカのオーガニック商品、特にワインの場合は、ぶどう畑での栽培がオーガニック(有機農)栽培という場合が多く、醸造の工程ではどうしても亜硫酸(もちろん、亜硫酸は天然の産物ではあるのですが)の添加が必要なことから、オーガニックワインという表記をラベルにつけるところは少ないのが現実です。
しかも、オーガニック栽培のぶどうでワインを造る生産者は、出来るだけ自然に近い形でワインを仕上げようとするため、亜硫酸の含有量も極めて少なく抑えてます。
厳密にオーガニックワインを目指す生産者は、亜硫酸を添加しない結果、ワインがすぐ酸化してしまうという、つまり劣性のワインというイメージを消費者にうえつけてしまいました。
ナパ・ヴァレーでオーガニック栽培を推進してきたフロッグス・リープのジョン・ウィリアムズさんは、
「ただマーケティングの手段としてオーガニックを唱えたくない。オーガニックで育ったワインはその自然さゆえに、土地の表情がワインに出ている。おいしくて当然なんだ」
と、あえてラベルにオーガニックを記載しない理由を語ってくれたことがあります。
オーガニック栽培として公式に名乗るには、カリフォルニアではCCOF(California Certified Organic Farmers)と呼ばれる機関によって認定を受け、毎年の検査にパスしなければなりません。
■フェッツアーのバイオダイナミックへの挑戦、ボンテッラ
ボンテッラ・ランチは、昔の農家の納屋を強化・改造して建てられたワイナリーで、ゲストルームとテイスティングルームを備え、周りを151ヘクタールの自社畑、そして自然そのままの山々で囲まれています。
畑の各所には畑を荒らすネズミやモグラを捕獲してくれるフクロウが棲みつくように木箱が設置され、あれれ、こんな小さな木箱にはちゃんと小鳥の巣までできてました。
私が訪問した今月はちょうど青いぶどうの実が大きく成長し始める時期。畑ではメキシコ人の労働者たちが余分な枝葉を落とす作業をしていました。畑の畝(うね)には1列おきに下草(カバークロップ)が植えられています。
夏も本番に入り、雨の少ないカリフォルニアではかなり下草も枯れかかっていますが、益虫が棲みかをなくすことのないように注意深く畑の手入れは行われます。
農園の周りには、羊やニワトリもたくさん飼われています。山羊達は毛糸となるウールを提供してくれるだけではなく、畑に放して雑草を食べてもらう役割もあるそうです。ニワトリは下草に隠れる小さな虫を突付いて食べてくれます。
また、畑の区画の境界線には、こんなにたくさんの種類の花が違った昆虫を集めるために植えられているんですよ。
畑全体が一つのサイクルをもって、自活している感じでした。
それもそのはず。説明してくれたフェッツアーの人が次に見せてくれたのは、ボンテッラ・ランチのバイオダイナミックの真髄みたいな部屋(ごめんなさい、暗くて写真が撮れませんでした)。
この小さな部屋で最もショックだったのが、牝牛の小さな角に牛の糞を詰めて、秋分の日に土の中へ埋めこみ、6ヵ月後の春分の日に取り出す「プレップ505」というツボでした。
プレップとは下準備のこと。これ以外にもシリカ(珪土)を詰めたもの、植物ではカモミール、ヤロー(ノコギリ草)、ネトル(イラ草)、タンポポ、樫の樹皮などを粉状にしたものが下準備の要素としてこの冷暗な場所に貯蔵されます。
これらはコンポースト(堆肥)の中に混ぜたり、直接ぶどうの木や土にまかれるそうです。しかも、月や太陽や星の動きに従って、カレンダーに従って、宇宙のエネルギーをぶどうに集約し最高の味わいを目指す、これが根底に流れる理論のようです。
バイオダイナミックは本来、1920年代にオーストリア人のルドルフ・シュタイナーという人が打ち立てた栽培論です。ヨーロッパではルロワ、シャプティエなどすばらしいワインがこの栽培方法から生まれていますが、アメリカではオーガニック栽培を行っているぶどう畑が実験的に学んでいる、というのが現状でしょう。
カリフォルニアでは、このボンテッラのほかに、ソノマ・カウンティのベンジガー(マイク・ベンジガーさん)が熱心にバイオダイナミックを実践されています。
バイオダイナミックには細かい規定がたくさんあり、その論理の理解に苦しむことからちょっと宗教じみていると批判する人もいて、アメリカワインの世界ではまだまだ独立していませんが、厳密にはボンテッラはバイオダイナミックのワインでもあるんです。なんだか体中が綺麗に洗浄されたような、宇宙に近くなったような気持ちでボンテッラワインを飲ませてもらいました。
2.ソノマ・カウンティ・ショーケース
食とワインの祭典を繰り広げるソノマ・カウンティのショーケース(ワインオークション)が今月11日から13日にかけて開催されました。
昨年の サテライト・カリフォルニア でもご紹介しましたが、今年はテーマも新たに「パシフィックリム」。
(サテライト・カリフォルニア vol.03)
太平洋に面したアジア諸国の食べ物や文化をクローズアップしようというものです。このサテライトの見出しの写真でもおわかりのとおり、純粋に日本人だとちょっと理解に苦しむ(?)アジアチックな雰囲気の中、今年はチケット完売の大盛況のうちに終わりました。
この3日間のスケジュールを簡単にご紹介しますね。
■1日目
・アぺレーションツアーとランチ
ドライクリーク
ロシアンリヴァー
ソノマ・ヴァレー
アレキサンダー・ヴァレー
・ワイナリーでのディナー
クロ・デュ・ボワ
セント・フランシス
セバスチャーニ
サファイヤ・ヒル
ルーツ・セラーズ
キヴィーラ
タンタラス
スツールミュラー
ワトル・クリーク
■2日目
・ワイナリーでのランチョン
アレキサンダーヴァレー
シャトー・スーヴェレン
シャトー・セントジーン
デローチ
エヴェレット・リッジ
フェラーリ・カラーノ
ガロ・ソノマ
グロリア・フェラー
ハナ
アイアン・ホース
ジョーダン
Jスパークリング
マーフィーグッド
プライド・マウンテン
パラダイス・リッジ
ペドロンチェリ
ロバート・ヤング
ローゼンブルム
ルーツ・セラーズ
ストーンストリート
ホワイトオーク
・夜は待望のバレルオークション
■3日目
・テイスト・オブ・ソノマと題される試飲、試食のイベント
参加ワイナリー数:97
参加レストラン:35
・夜はサンフランシスコ・シンフォニーによる野外コンサート
初日はソノマ・カウンティの4つのアぺレーションに参加者はそれぞれ割り振られ、畑を訪れたり、そこでランチをいただいたり、ワインメーカーや栽培責任者からゆっくりと話を聞きながら地元の味を体で体験できる一日です。
私が参加したアぺレーションは、アレキサンダー・ヴァレーでした。アレキサンダー・ヴァレーは、ソノマ・カウンティでも最も北、厳密には北東に位置し、南北40キロ、幅は最も狭いところで8キロと縦に長いアぺレーションです。
気候はソノマ・カウンティの中では比較的温かく、どちらかというとナパ・ヴァレーに似ているため、栽培品種も赤が中心。山の斜面や北部のヴァレーフロア(平坦地)ではカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ジンファンデル、シラー、サンジョヴェーゼが、南部の平坦地、特にロシアンリヴァー沿いではシャルドネが生産されます。
アレキサンダー・ヴァレーの歴史はその名に由来する、サイラス・アレキサンダーという人物に始まります。このサイラスという人は1840年代のゴールドラッシュにカリフォルニアにわたってきました。
当時、隊長というのでしょうか、キャプテン・フィッチという人が、サイラス・アレキサンダーに牧場に適した候補地を探して欲しいとヘッドハントされたのがきっかけで、サイラスはこの地にもちろんぶどうも含めて、たくさんの果樹栽培や牛、馬、羊の飼育などを大掛かりに手がけました。
その報酬として彼は、ランチョ・ソトヨメと呼ばれる土地をもらい、1841年に定住。その後アレキサンダー・ヴァレーという名がつきました。
この話は、このランチョ・ソトヨメを1960年代から所有するウェッツェル家の娘さん、ケイティさんに伺いましたが、彼女の家族の敷地には、サイラスさんをはじめ、その子孫のお墓もあるそうですよ。ウェッツェル家は現在、アレキサンダーヴァレー・ヴィンヤードというブランドでワインを生産しています。
このワイナリーのリザーヴワインは、その名も「サイラス」。凝縮した果実にソフトな口当たり、カベルネを主体とするメリタージュワイン*ですが、ナパのカベルネとはまた一味違った落ち着いた味わいでした。
*メリタージュワイン:アメリカのワインに使われるボルドー品種のブレンドワイン。赤ワインの場合、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、カベルネ・フラン、マルベック、プティ・ヴェルドのいずれかが使われていなければならない。
アレキサンダー・ヴァレーを代表する老舗、シミ・ワイナリーの自社畑でリザーブ・カベルネ・ソーヴィニヨンを生み出しているランドスライドという畑を訪問しました。
ランドスライドは日本語にすると「地すべり」。細長く広がるこの畑はロシアンリヴァ−(川)に沿って、本当に山が崩れたように緩やかな傾斜をなしています。
太古の時代、大きな地殻変動が起こっていた頃、実はロシアン・リヴァーはナパの方へ向かって流れていたそうです。地震や火山の爆発が続き、ナパのセントヘレナ山は片方が崩れ落ちロシアン・リヴァーを閉ざしてしまいました。川は流れる方向を今のソノマの方向へ変えてしまったという裏話があります。
そのときに地すべりを起こしたのがこの畑らしいんです。ですから、土壌は山から堆積された火山性土壌とロシアンリヴァーが運び込んだ堆積土壌(砂や小石が多い)ものが地殻変動によって入れ混ざっています。一般に高度が高くなるに連れて粘土の含有率が高くなるそうです。
ワインメーカーのニック・ゴールドシュミットさんによると、土壌の種類は10種類で、ボルドー品種すべてを合計すると35のクローンと10種類の台木を使って栽培されているとのこと。畑の低地の部分は霧の影響からハングタイムが長く平均145日。
果実味の凝縮したソフトでエレガントなスタイルにしあがり、山の上に登るに従ってタンニンが強く、パワーのあるスタイルで抽出をしすぎないように気をつけるとニックさんは説明してくれました。
ソノマのショーケース期間中は、このようにランチやディナーを通して全米から集まるいろいろな人と話をするチャンスがあります。私が最もお薦めするのは、最終日のテイスト・オブ・ソノマとコンサートです。
テイスト・オブ・ソノマでは、ロシアンリヴァー・ヴァレー、ソノマ・ヴァレー、アレキサンダー・ヴァレー、ドライクリーク・ヴァレーと4つの大きなアぺレーション毎にテントが張られ、その中でワイナリーの代表がワインの話をしながら注いでくれます。
また、ソノマ・カウンティのシェフもテーマにあったアペタイザーを披露。今年はパシフィックリムというだけあって、素材も鮮魚(特にツナ)、のり、春雨、椎茸、わさびなども使われていました。意外と興味深かったのは、しょう油をみんな控えていたことです。
ソノマ・カウンティで人気のある日本料理の『花』レストランのシェフ、ケンさんは、「2日間、考えましたよ。しょう油はやはり避けて、塩コショウでまとめました」とクリエーティブな寿司を出してくれました。


エンダイヴの葉に乗せられたこのお寿司。アボカドとマグロをわさび、オリープオイル、ゆず、塩コショウで和えたものが添えてあります。ご飯の部分にはトンブリ*が入ってなかなかの人気。皆さんも試してみませんか。
*トンブリ:ほうきぎ(別名 ははきぎ、ねんどう、あかくさなど)の実をいったん乾燥させてから加熱加工したもの。とんぶりの名は、唐(とう)からきた「ぶりこ(ハタハタという魚の卵)」に似たもの=とうぶりがなまったもの。
ワイナリーも今年は、フラワーズ、プライド・マウンテン、ポール・ホブス、ワトル・クリークといったニューフェースが初参加しました。


肝心のオークションですが、中でも今年のユニークなロットは、ユナイテッド航空が供出した『Trip of a Lifetime』アジアへの9泊10日の旅。ファーストクラスでカップルが東京、上海、香港へと旅するパッケージです。落札額1万ドルなり。

ロシアンヒル・ワイナリーの人たちとオークショナーのフリッツ・ハットンさん

ガロソノマのジーナ・ガロさんとガイザーピークのダリル・グルームさん

ソノマ・カウンティの豊かな食材と着実なワインを満喫できる3日間は、サンフランシスコ・シンフォニーの野外コンサートにて締めくくられます。

夕日の映えるなか、今年は中国から胡弓のソリスト、ジービン・チェンさんがまさにパンパシフィックのテーマを表現するかのように、映画『Crouching Tiger, Hidden Dragon』(邦題『グリーン・デスティニー』)のテーマ曲を披露。うっとり、感動の3時間でした。
【あとがき】
6月に引き続き、またまたぶどうの成長のようすをお伝えします。どの畑にいっても耳にするのが、「今年はしっかり房がついたよ」というコメント。春の結実期にとても気候が安定していたからです。たわわに実った青い粒状のぶどうが強いカリフォルニアの日照を受けて、のびのびと育っています。
ヴェレゾン(色づき)が始まると畑では、未熟な房を落とし均一のとれた成熟を待ちます。さて、どんなヴィンテージが待っているのでしょうね。8月のぶどうスナップショットもお楽しみに。






