
■ルイ14世
皆さんごきげんよう(ちょっと上品過ぎるかな?)。ソムリエ・ビブリオテークにようこそ!
毎回、歴史上に登場した人物や出来事を通してワインに魅せられていくページです。このコーナーの司会・進行役は、ワタクシ、イトウケンジ1号のコピーロボットであります「イトウケンジ2号」が努めさせていただきますので、最後までお付き合いくださいね!
ケンジ2号:
「さて、今回のゲストは超大物です! なんと、フランスにおける王政の絶対王政主義を確立させ、その威光を自国民だけでなく、ヨーロッパの近隣諸国の王侯貴族達にも認識させた人物。では、紹介しましょう! フランス、ブルボン王朝始祖であるアンリ4世の曽孫にあたる『ルイ14世(1638−1715)』その人であーります。はりきって参りましょう!」
ルイ14世:
「ケンジ2号、それに読者諸君! 朕(ちん)がフランス国王ルイ14世である。朕は国家であるがゆえに、そなたたちは、国家の第一の僕である朕に絶対服従しなければならないのだよ。わかるかね?」
ケンジ2号:
「あの、お言葉ですが、ここは貴方の生きていらした時代と違うんですよ。それに、国王もそんなに気を張ってばかりいたら疲れちゃうんじゃないですか? 子供の頃のように無邪気で明るい国王に戻ってくださいよ」
ルイ14世:
「そっ、それもそうであるな。もう朕の時代でもなく、ましてや国を治めなくてもよい環境にあるではないか。それを考えるとなんか急に楽しい気分になってきたぞ! ケンジ2号感謝するぞ」
ケンジ2号:
「じゃ、さっそく国王が普通に戻ったところでお話を進めましょう。ねえ、国王の人生は、安泰のように思われがちですけれど、結構波乱に満ち溢れていますよね。例えば、幼少の時に起こった『フロンドの乱』や『鉄仮面の問題』など挙げ出したらきりがないですよね」
ルイ14世:
「いかにも。私も子供のときは天真爛漫で明るかったんだが、度重なる陰謀や私の暗殺計画、国家転覆などでだんだんと私も猜疑心が強くなり、誰も信頼できなくなってしまいそうになるのも当然。それで私の権力の集中化を図っていったわけだよ」
ケンジ2号:
「確かにそういう状況下に置かれれば、僕もそういうふうに考えちゃうかも。それに、当初国王の財務総監であったニコラ・フーケをどうして罷免したの?」
ルイ14世:
「彼をどうして罷免したかというと、財力に物をいわせてあまりにも巨大な力を誇示し、しかも公金横領も日常茶飯事。不正は平気でするし野心家でもあったのだよ。
それに比べ、私の摂政役であり、財務総監でもあったマザランがこの世を去り、このポストに誰をつかそうかと考えたときに、とりあえず財務長官にこのフーケを配し、外交にはリオンヌ、軍事にはル・テリエをと考えていたのだが、フーケは、それ以上の地位を欲しているようだったね。
そして、1661年8月17日、彼(フーケ)は、私たち一行を彼の領地であるヴォー・ル・ヴィコントの邸宅に招いたのさ」
ケンジ2号:
「現在でも大変有名なシャトーの一つとして残ってますよ。ね、ケンジ1号」
ケンジ1号:
「そうだね、このシャトーは、建築家ルブランの手によるもので、しかも庭園はあのル・ノートルが手がけたというから、あの当時としては最新で超豪華な邸宅だったんでしょうね。でも、それが、フーケにとって最初で最後の大失敗につながることになろうとは思わなかったのでしょうね」
ルイ14世:
「このときはすでに私も23歳。今まで出来なかったことや暖め続けてきた理想の治世を行うときがやってきたと思ったものだ。しかし、それには現在の私の力量や権力は形ではトップとなっているが、まだ磐石ではない。
特に私はフーケが王家を凌ぐ財力を持っていることに脅威を感じ、それをどうやって封じこめるかということが私の感心事の一つとなっていた矢先に、あのようなヴォー・ル・ヴィコントの宴は私の心を逆撫でし、痛くプライドを傷つけられた思いだったよ。
そして、私は決心したんだよ。彼のいっさいの権力と財力を剥奪するため逮捕しようと。そして、これを基盤に絶対王政主義を確立するのだと」
ケンジ1号:
「それが、俗にいう『フーケ事件』ですね。彼をその年の内に逮捕し、終身刑に処したわけですね。でも、これだけの大物を首尾よく逮捕できましたね」
ルイ14世:
「そこは、私もポーカーフェイスでフーケに絶対悟られないように用意周到にことを進めたし、私に忠誠を誓った頼もしい銃士隊長代理であるダルタニャンが活躍してくれたからね」
ケンジ2号:
「えっ! でも、ダルタニャンはフランスの文豪アレクサンドル・デュマが書いた『三銃士』の主人公で架空上の人物じゃないの?」
ケンジ1号:
「いやいや、それがケンジ2号。実は、あの物語を書くにあたって、物語そのままというようなモデルが実在したんだよ。それも、シャルル・ダルタニャン(1615−1673)という人物なんだよ。この人はまた次の機会にお招きするとしよう」
ルイ14世:
「ほう、あのダルタニャンが後世で物語の主人公として書かれ、しかもずっと後々の人々に語り継がれているとは奴もたいしたものだ。しかし、私は、語り継がれていないのかなー」
ケンジ2号:
「語り継がれていますとも! 王のことを皆なんて言っているか知っていますか?」
ルイ14世:
「知るわけないだろっ!」
ケンジ1号:
「『太陽王ルイ14世』と言っていますよ。フランスの歴代王の中では3本の指に入るぐらい人気のある王で通ってますよ」
ルイ14世:
「それはな、私が『比類なき太陽の如く』というモットーを掲げていたからだよ」
ケンジ2号:
「カッコイイ!」
ルイ14世:
「そうかな?」
ケンジ2号:
「そうですとも!」
ケンジ1号:
「話が脱線しそうなところで、フーケの後任は誰が就任したのですか?」
ルイ14世:
「新任の財務総監にはコルベールをおいたよ。彼は、フーケを逮捕するにあたり彼と共同でプランを練ったからな」
ケンジ2号:
「じゃあ、彼もフーケの二の舞になるんじゃないの? 権力欲しさに」
ルイ14世:
「いやいや。ある意味、私の不興をかったら逮捕、失脚、刑罰、処刑だから、彼はそんなことをしないし、また出来ないと思うがね」
ケンジ1号:
「確かにそうですね。コルベール以外の人々もそういう気持ちになると思いますし、忠誠を誓って一生懸命職務を果たすと思います。まさに絶対王政確立という基盤が出来てきましたね」
ルイ14世:
「そうだろ! 財務総監クラスでさえも簡単に処分すれば、私の権限は大きく広がるし確立できると思ったからだよ。それが、見事に当たったわけだよ」
ケンジ2号:
「かくして王は権力を集中させる事に成功し、国政も秀でて、国内を非常に良い状態にもっていきましたよね。そうなったら王にふさわしい宮殿が必要になってきますよね。しかも幼少の頃の『フロンドの乱』で懲りて、パリを離れ、パリ郊外のベルサイユに宮殿を建築させたんですよね」
ルイ14世:
「そうなんだよ。やはり、国家の象徴となるゴージャスな宮殿を建て、そこに私が住むことにより、近隣諸国に対してもフランスはゆるぎなき無敵の王国としてのアピールと成り得ると思ったからだよ」
ケンジ1号:
「確かに、あの壮大な宮殿は現代でも素晴らしくゴージャスで訪問する人々を魅了し続けていますよね。このベルサイユ宮殿が出来る前はどんなところだったのですか?」
ルイ14世:
「ここは、狩場として王族が所有していた場所で、小さな狩猟館があるぐらいだったのだ。で、そこに建てさせた訳だ。この辺りは水が確保できず、貯水池をわざわざ造り、宮殿まで水を引いてこさせたんだよ。それに、庭園はあのル・ノートルに任せて造らせたのだよ」
ケンジ1号:
「壮大ですね。もし、あのような宮殿を現代で建造しようものなら莫大な費用が掛かりすぎて国家予算を組めないですから、とてもじゃないですけれども造れないですよ。だけど王の時代は、絶対の権力者が君臨しているわけですから可能だったかもしれないですね」
ケンジ2号:
「ねえ、ところで話し変わるけど、王様ってなんでカツラを宮廷で流行させたの?」
ルイ14世:
「なぜ、お前もそのような事を唐突に質問してくるわけ?」
ケンジ2号:
「だって、気になるじゃないですか……」
ルイ14世:
「今までの私だったら、お前がこのような質問してきたら激怒していたが、子供の頃のように素直な気持ちで応えるから今日は特別に話してあげよう。
私は20代半ば過ぎから、だんだんと頭髪の量が減り出して寂しくなってきたから、カツラを付け出したわけだが、私の臣下たちもいつしかカツラを付けるようになって、これがブームになり、ヨーロッパ中で流行ることになったわけだな。とても高価なカツラまで登場してきたりしたのだよ」
ケンジ2号:
「だから、王様の肖像で髪の色やヘアスタイルが大胆に変わっているわけですね、納得」
ルイ14世:
「あまり触れて欲しくない話題だったが、満足したかね、ケンジ2号」
ケンジ2号:
「ええ。それに、王様は、心やさしいんだなと思いました。ありがとうございます」
ケンジ1号:
「それと、私からも質問なんですが。王様の名前を冠した料理があるのですが、やはり、王様が好んで召し上がった物なのですか?」
ルイ14世:
「ああ、舌平目をポシェしたものに海老を使ったソースとザリガニの殻を使ったナンテュアソースを混ぜたものをかけたものかな?」
ケンジ1号:
「そうです」
ルイ14世:
「確かに好んだ料理の一つだよ」
ケンジ1号:
「そうか、わかったぞ! どうして舌平目が王侯貴族の魚か。他にも舌平目を使った料理でお孫さんの名を冠した(舌平目のルイ15世風)という料理もあるぐらいだからね」
ケンジ2号:
「今度そのお料理をぜひ食べてみたいなー」
ケンジ1号:
「それらの料理と一緒に王様の愛飲したワインも飲んで楽しみたいね。王様、どんなワインを好んで飲んでいたのですか?」
ルイ14世:
「私が愛飲したワインは数限りないが、しいてあげるとすれば、私の主治医であったファゴンが薦めてくれたワインで、ブルゴーニュ地方で造られるニュイという村のワインかな。
これは、なんでも私の身体に合っており、病気にもなりにくいというものだからといって飲み始めたのだが、このワインが結構美味で、すぐに好きになってしまったものなんだよ」
ケンジ1号:
「現在ではニュイ・サン・ジョルジュと呼ばれている村のワインですね。それにここのワインは、ブルゴーニュ地方のコート・ド・ニュイ地区でも力強く、フル・ボディな味わいを持つワインとして有名なので、多分ファゴンさんは滋養強壮に良いと思ったんじゃないかなー」
ルイ14世:
「全くケンジ1号の言うとおりだよ。まさにファゴンが私に勧めてくれたときのセリフそのものだよ」
ケンジ2号:
「さすが、ケンジ1号! ブラボー」
ケンジ1号:
「偶然だよ。でも、嬉しいよ。でも、本当に効き目があつたのですか?」
ルイ14世:
「いやー、それがどういうわけか、ニュイのワインを飲むとなんか元気が出てくるというか、活力が沸いてくるというか、とても調子が良いよ。晩年患っていた痔の調子も良くなったような気がしてきたからね」
ケンジ2号:
「王は……、痔だったんですか?」
ルイ14世:
「私の職務に忙殺されて、過労がたたり痔になってしまったのだよ。それが悪いか! ケンジ2号!」
ケンジ2号:
「別に悪いって言ってるんじゃなくて、大変だなーと思って。ねえ、ところで他に王様の印象に残るワインは無いの?」
ルイ14世:
「印象に残るワイン? えーっと、あったかな……」
ケンジ1号:
「あるじゃないですか。あのワインが!」
ルイ14世:
「さて、あったかな?」
ケンジ1号:
「ハンガリーのトカイ・ヘジャリア地方で造られるトカイ・ワインがあるじゃないですか」
ルイ14世:
「そうそう、あのワインは、とても甘美でリッチな酒質で『まさに、王のワイン、ワインの王』と呼ぶにふさわしい味わいで印象的だったね」
ケンジ1号:
「なぜ、ハンガリーのワインを飲む機会があったのですか?」
ルイ14世:
「当時、フランスはオランダ、神聖ローマ帝国に属している国々、そして、スペイン継承戦争など、諸外国との戦争状態だったのだよ。
そして、神聖ローマ帝国の皇帝でもあるハプスブルグ一族のオーストリア帝国に吸収合併されたハンガリー帝国の独立を悲願とする貴族から、フランスに援助してもらおうと密使を送ってきた際、このワインも一緒に携え私に献上したのだよ。多分」
ケンジ1号:
「いろいろな政治的ないきさつがあるんですね」
ルイ14世:
「そうだよ。いかにフランスを強くし、国内の経済を強化しそれらを維持し続けるため、常に私自身努力を惜しまなかったよ」
ケンジ1号:
「それで、あの絶対王政主義を確立することが出来たのですね。ナントの勅令の廃止によってフランスをカトリックにまとめ、いろんな国内の謀反や国王の暗殺計画をことごとく粉砕、阻止して太陽王の異名を謳歌した王。まだまだ、王に関するお話しは尽きないですが、今回はこの辺でまとめたいと思います。王様、どうもありがとうございました」
ルイ14世:
「私もすごく楽しい時間を過ごすことが出来てよかったよ。それでは、現代の皆さんさようなら、ありがとう! さらば!」
ケンジ2号:
「さようなら、王様。そして、皆さんさようなら。また、次回も素敵なゲストをお招きしますのでどうぞお楽しみに」