■ローマ法皇ヨハネス22世、グレゴリウス11世
ソムリエ・ビブリオテークにようこそ!
このビブリオテークでは毎回、歴史上に登場した人物や出来事を通してワインに魅せられていくページです。このコーナーの司会・進行役は、イトウケンジ2号が努めさせていただきます! 今回は、どんな話の展開になるやら! ? 最後まで見ていってね。
今回は、なんとゲストを二人お迎えしてのトーク・ショーです! しかも、法皇をお二人です。法皇シリーズ第2弾。早速ご登場いただきましょう!
第196代ローマ法皇ヨハネス22世(生誕年不詳。教皇在位1316-1334年)と第201代ローマ法皇グレゴリウス11世(生誕年不詳。1370-1378年)であります。皆さん、拍手拍手ー! パチパチパチー。
ヨハネ22:
「現代の皆さん、ごきげんよう。第196代目のローマ法皇、ヨハネス22世です。私の話をぜひ聞いていってください。皆が幸せになれますように。アーメン」
グレゴ11:
「皆さーん、こんにちわー。私はアヴィニョンの捕囚の最後の法皇であり、第201代法皇のグレゴリウス11世であります。神の御加護を、アーメン」
ケンジ2号:
「いやーお二人にお会いできて光栄です。今回もなんか素晴らしいお話が伺えそうな感じがしてきたね。では、早速質問をしちゃおう! まず、ヨハネス22世! いつ法皇におなりになったのですか?」
ヨハネ22:
「前回のビブリオテークに登場されたクレメンス5世が1314年に死去された後、教皇選挙会議(コンクラーベ)が行われたのですが、なかなか折り合いがつかず、2年もの間、教皇空位期間がありました。その後1316年になって、ようやく私が法皇に選らばれたのです。 選出された当時、私はすでに72歳の高齢であり、しかも青白く痩せていて病弱そうで背も高くなく小男でありましたから……。人々は私の教皇の在位期間は、そう長く続かないだろうと思っていたものです。当初はね」
ケンジ2号:
「でもヨハネス22世。あなたはなんと18年もの間教皇だったじゃないですか! それって、凄いことですね」
ヨハネ22:
「これも神が私に与えた試練だと思いました」
ケンジ2号:
「在位期間中にはどんなことをされたのですか?」
ヨハネ22:
「まずアヴィニョンの教皇庁を堅固な城館にし、繁栄させようとしました。でもその城館を建造するには莫大な費用がかかりますので、どうやって費用捻出しようかと考えたのです」
ケンジ2号:
「それで、どう資金を集めたの?」
ヨハネ22:
「教皇庁の再編を図り、教皇庁に納税する税金の徴収を厳しくしました。それによって教皇庁の財政は潤い、その資金で16年もの歳月をかけ城館を建造することが出来たのです」
ケンジ2号:
「そうだったのかー。ヨハネス22世、あなたがアヴィニョンの教皇庁の城館の基礎を建造したんだね。すごいや! そこに、ずっと住んでたの?」
ヨハネ22:
「それがですね、アヴィニョンの町の郊外にお忍びで行ける別荘をこれまた建築してしていまったのですよ」
ケンジ2号:
「えっ! 何のために?」
ヨハネ22:
「そっ、それはですね……。まあ、いろいろありまして……」
ケンジ2号:
「何で教えてくれないのー。じゃあ、グレゴリウス11世、ヨハネス22世のかわりに教えてよ」
グレゴ11:
「私はヨハネス22世の時代には生まれていませんし、ましてや知るよしもございません」
ケンジ2号:
「仕方ないなー。あ、ケンジ1号に聞いてみよう。なんか知っているかもしれないしな。おーい、ケンジ1号」
ケンジ1号:
「どうもー! ケンジ1号です。教皇お会いできて光栄です。お会いしてすぐなのですが、ヨハネス22世がなぜ別荘をお造りになられたかと申しますと、教皇庁の中だけで暮らすだけでは健康上良くありませんし、気分転換にもなりますからね。でも、実はもう一つ理由があるみたいなのですね、これが!」
ケンジ2号:
「その、最後の理由とはなに? 1号、もったいぶらずに教えてよ」
ケンジ1号:
「それは、この頃の教皇はもちろんのこと、枢機卿たちもある意味、『非常に遊び慣れた方々』でもあって、教皇庁ではできないような乱痴気騒ぎのできる場所ということでもあったんじゃないのかな。 さらにそこに住んでいた住民たちは狂喜し、《我が村に教皇様がやってきたから皆でぶどうを栽培し、美味しいワインを造って教皇様に飲んでいただこう。そして、末永く御滞在していただくために毎年出来たワインの何樽かを教皇様に献上しようじゃないか》と言うノリでワイン造りも始められた感じなんですよ。 当初、ヨハネス22世は、もっぱらブルゴーニュ地方のボーヌという町のワインを愛飲されてましたが教皇の廷臣たちはワイン造りを奨励し、村の人々と共に発展させていったみたいですよ」
ケンジ2号:
「なーんだ、それは、教皇が言葉に詰まるはずだよ。納得。でも、1号そのぶどう畑やワインは現在でも存在するの?」
ケンジ1号:
「存在しますよー。そのワインが造られてる地区の名は《シャトーヌフ・デュ・パプ(Chateauneuf du Pape)》と呼ばれているんだよ」
ケンジ2号:
「あ、聞いたことある。その地区の名前。確か、コート・デュ・ローヌ地方の南部にあって、まさにアヴィニョンの郊外じゃん」
ケンジ1号:
「その通り! この地区はシャトーヌフ・デュ・パプ村を中心とし、オランジュの町の一部とソルグ、べダリッド、クールテゾンの各村から成り立っている地区で、原産地統制呼称《アペラシオン・ドリジーヌ・コントローレA.O.C.》の産みの親でもあるんだよ。 1929年、当時この地区に住んでいたルロワ男爵を中心としたワイン生産者たちが品質の向上と安定化、そして、まがい物の防止を図るため政府に申請したのがはじまりで、他の地方や地区に普及し、1935年にA.O.C.として全国に発令されたのですよ」
ヨハネ22:
「それは素晴らしい。私が造らせた別荘の周辺のワイン産地が現代の人々にも支持を得ているなんて嬉しい限りです。私も当初はボーヌのワインの虜でしたが、このワインを飲んでみるとコクと力強さがあり、滋養と強壮に良いのではと感じ、それ以来、愛飲していましたよ」
グレゴ11:
「私も教皇になってからアヴィニョンを去るまでずっと飲んでおりました」
ケンジ2号:
「へぇーみんなそうなんだね。ねえ、1号、このシャトーヌフ・デュ・パプは、どんなぶどう品種構成なの?」
ケンジ1号:
「現在シャトーヌフ・デュ・パプでは、白・赤のワインが認められていて、それらのワインに使用許可されているぶどう品種は、なんと13品種! その内、黒ぶどう品種は、グルナッシュ、シラー、サンソ−、ムールヴェードル、ミュスカルダン、ヴァカレーズ、テレ・ノワール、クーノワーズ。そして白ぶどう品種は、ブールブーラン、ピクプール、クレーレット、ルーサンヌ、ピカルダンなのですが、実際にはグルナッシュにはブラン《白》があり、このグルナッシュ・ブランを含めると14品種が存在するわけなのです」
ケンジ2号:
「うわー……造る方も大変だね」
グレゴ11:
「しかし、それら多くの品種をブレンドすることによって、ワインに調和が生まれる一方、さまざまなタイプのシャトーヌフ・デュ・パプが存在することになるのです。どういうワイン造るかということは、もちろん、A.O.C.の規定の枠内でワイン造りをするの当然なんだけどワインの造り手が決めることであり、飲み手もまた自分の趣向に合ったワインを探求することに意義が出てくるわけですね。すなわち、真実に向かって皆、精進せよ。ということですな」
ケンジ2号:
「いい話だね。トークショウを御覧のみなさんもぜひ、色々なシャトーヌフ・デュ・パプを試して頂いて楽しみながら悟りの境地を開いて下さい」
ケンジ1号:
「そうだね。で、ご自分の好みのシャトーヌフ・デュ・パプを発見してみるのもおもしろいですね。そういえば、グレゴリウス11世も当然飲んでたんですよね?」
グレゴ11:
「もちろん飲んでましたとも! 私の先代の教皇たちもこのワインが好きで愛飲していました」
ケンジ2号:
「どうしてグレゴリウス11世は、このすばらしいアヴィニョンの教皇庁を放棄してローマに帰還されたのですか?」
グレゴ11:
「教皇はフランスだけではなく、全キリスト教国の教皇でもある訳なのですよ。ヨーロッパ中のキリスト教徒たちは教皇のローマ帰還を熱望していたのです。私は考え決意し、1376年9月13日にアヴィヨンを出発してローマに向かいました」
ケンジ2号:
「まさかお一人でローマに向かわれたのではないんですよね?」
グレゴ11:
「大勢の臣民たちと一緒にです。アヴィニョンを出立して、10月2日にマルセイユから船に乗りました。途中で嵐に巻き込まれ、4ヶ月後の1377年1月17日になってようやくローマに到着できたのです。そして、ローマの市民たちの歓迎を受けたのです。なんと素晴らしいことだったでしょう。ヨーロッパのキリスト教徒たちも歓喜したのです」
ケンジ2号:
「それは、よかったね! でも、シャトーヌフ・デュ・パプが飲めなくなって残念じゃない?」
グレゴ11:
「確かに残念ではありましたが、このローマ帰還を達成させなければキリスト教の繁栄はありません。シャトーヌフ・デュ・パプが飲めないことは私たちにとっては些細なことなのです」
ケンジ1号:
「でも、グレゴリウス11世がイタリアのトスカーナ州にもたらしたワイン生産者もあるんですよ!」
ケンジ2号:
「え、そんなところがあるの? 教えて、教えてよ!」
グレゴ11:
「わたしも、知りたい知りたい」
ケンジ1号:
「トスカーナ州のシエナ県にあるヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチアーノを造っているアヴィニョネージっていう生産者」
グレゴ11:
「なんだ、アヴィニョンの人っていう生産者かね」
ケンジ2号:
「そのまんまジャン! で、どうなのワインは?」
ケンジ1号:
「サンジョベーゼのクローン品種のプルニョ−ロ・ジェンティーレを使用しているヴィーノ・ノビレ・ディ・モンテプルチャーノをはじめ、カパネッリ、グリフィ、メルロ・トロ・デシデリーオなどのヴィーノ・ダ・タヴォーラを生産し、国内外で非常に評価を得ているワインを産しているんです。 このアヴィニョネージの所有者はファルヴォ一族で1978年から元詰を始めました。歴史としてはかなり新しいけれど今後が期待されてます。ちなみにここは、なんと畑を106haも所有しているんですよ」
ケンジ2号:
「ぜひ、このワインを試してみたいね」
グレゴ11:
「このワインが、もし私の生きている時代に造るられていれば、必ずこのモンテプルチアーノの近くに別荘を建ててしょっちゅうワインを飲みにいっていたと思うのですが、残念……」
ケンジ1号:
「じゃあ、トークショウをこの辺で終わらせて皆で飲みにいきますか? 残りの3人: 「大賛成! いきましょう!」
ケンジ2号:
「というわけなので、この辺で今回のトークショウお開きです。皆さんまた次回お楽しみに! バイバイー」