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ビブリオテーク 11
ビブリオテークimg マリー・アントワネットimg

 

■マリー・アントワネット(2)

皆さん! ソムリエ・ビブリオテークにようこそ!

このビブリオテークでは毎回、歴史上に登場した人物や出来事を通してワインに魅せられていくページです。このコーナーの司会・進行役は、イトウケンジ2号が努めさせていただきます! 最後まで見ていってね。

実は前回登場のマリー・アントワネット王妃(1755ー1793)からどうも納得がいかないので「再登場させろ!」というメッセージをいただきました……。 このコーナーの進行委員会で審議したところ、特別に許可が得られました。

さあ、リベンジなるかマリー・アントワネット王妃! では、再び、ご登場いただきましょう。王妃どうぞ。

 

ケンジ2号:
「こんにちは! 王妃。お元気そうで」

マリーアン:
「もうー。元気もヘッタクレもないわよ! 前回では私や王のことをフランス革命前夜をテーマに話が進行して、だいぶ私たちにとっては、素直に納得できない内容だったので王と相談して再登場を願いでましたのよ。 今回は、前回なかなかお話できなかった私達の作り上げた素晴らしい文化やお話もあるので皆さんも楽しみにしてね」

ケンジ2号:
「またー、浪費して作り上げたものでしょ。非現実的だよねー」

マリーアン:
「なにいってんのよ! アンタ! その非現実的な文化があって美的感覚が養われ一般大衆化するんでしょ。ケンジ2号、アンタは黙ってて!」

ケンジ2号:
「おーコワ! てなワケで、ケンジ1号を呼んで今回もビブリオテーク進行していってもらいましょう! では、ケンジ1号! 頼むわ」

ケンジ1号:
「どうも、アントワネット王妃。前回のリベンジだそうですね」

マリーアン:
「そんな、リベンジと申しましても、ワインにまつわるお話が前回はあまりにひどかったじゃない。だって、私が処刑される前日にお願いしたサンセールの白の話だけだったから、もっとお話したくてやってまいりましたの」

ケンジ1号:
「考えてみればそうですよね、王妃は、プチ・トリアノンにて華やかな文化が形成されましたよね」

マリーアン:
「そうなのよ、ベルサイユ宮殿の離宮にあたるこのプチ・トリアノンを私が手に入れたのは1774年。なぜ、私がこの離宮を気に入ったのかというところをお話するわね。

そのものよりもその周りに広がる庭園で、それまではフランスの有名な造園家ル・ノートルの幾何学的な庭園は、私にとって魅力的なものではなく、それらをやめ、より自然で自由に植物を茂らせるイギリス式庭園を基調に曲がりくねった小道や泉や滝を造らせ、さまざまな彫刻を飾らせたの。

小島には田舎風の小橋を架け、その小島の中央に《愛の神殿》と命名した小さな建物を建てさせたの。そのほかにも色々な試みをこの庭園で行ったわ。そして、この離宮で多くの華やかな宴を開いたのよ」

ケンジ1号:
「非常に豪華で素晴らしい宴でしたでしょう? 例えば印象に残るのはどんな方をお招きした時でした?」

マリーアン:
「そうね。1777年5月、私の兄である神聖ローマ帝国皇帝のヨーゼフ2世をこのベルサイユに招いて、ベルサイユ宮殿での宴会はもちろんのこと、私のプチ・トリアノンで行った宴会が素晴らしかったわね。263人をお招きしてのこの大宴会は大成功でしたわ」

ケンジ1号:
「それはすごいですね。で、こういった宴会が数多く催されたわけですが、その時に、王妃があるものを考案され、現在でもそれを我々が使っている物がありますよね?」

ケンジ2号:
「えっ! 何、どんな物を考案したの? 王妃、ぜひ教えて欲しいなー」

マリーアン:
「それはねー、グラスなのよ! 」

ケンジ1号:
「どんな、グラスなのですか? 」

マリーアン:
「私の乳房をかたどって造らせたシャンパーニュグラスなのよ! それはとてもゴージャスで私にピッタリのグラスですわ」

ケンジ1号:
「このグラスの写真を見せて頂きましたが、王妃の言うとおり凄いデザインですね。でも、なぜフル−トの形をした伝統的なシャンパーニュグラスをやめ、この斬新なグラスに変えられたんですか?」

マリーアン:
「フルートグラスは、素晴らしいと思いますが、私にとってはあまり好きじゃないの。だって、あの形のグラスは、おしゃべりしながらシャンパーニュを飲むにはちょっと問題があるのよね……」

ケンジ1号:
「ウン、それは理解できるな。フルート型は、顔を少し上げて飲まないといけないし、あの当時のベルサイユで開催されるさまざまな舞踏会や宴会で、会話を楽しむとなれば少しフルートグラスだと面倒なんですよね」

マリーアン:
「そうなのよ。そして顔を上げず、会話をしている方と目線を変えずに飲めるデザインを考えたの。口が広く、やや浅い底のグラス。それで、私のこの豊満な乳房を型にとってもらって作ったの。王室にふさわしく、気品があり少しエロティックな雰囲気を醸し出しているでしょ?」

ケンジ1号:
「品のあるクープグラス! それに、3箇所で支えている山羊の頭が印象的ですね。それに、フランスをはじめ、ヨーロッパは日本と比べて湿度が低く、肌が乾燥しやすく皺も出来やすいんですよ。

顔はお化粧をして、身体は衣服を身に着けるから分からないけど顎の下や首の皺は以外と隠せないんですよ。それで、ネックレスや宝飾品などを身に付けたりしたりしたみたいですね。

だから、フルートグラスを使用すると特にご年配の女性は顔を上げてシャンパーニュを飲んだときに皺が露見してしまうので、女性の方々にとってこのクープグラスはさぞ救世主のごとく歓迎されたのではないですか?」

マリーアン:
「そうなのです! それ以来私をはじめ、私を取り巻く貴族たちが愛用したわけです。そのグラスで飲み干すシャンパーニュはとても美味しかったわ!」

ケンジ1号:
「では、王妃の印象に残るシャンパーニュはどこのメゾン(シャンパーニュ・メーカー)ですか?」

マリーアン:
「そうね、私が飲んだシャンパーニュは沢山あって、これだというものをなかなか特定できにくいのですが、あえて挙げるならばエイドシック社のシャンパーニュ。しかも、このメゾンの極上品であった《フローレンス・ルイ》ですね」

ケンジ1号:
「なぜ?」

マリーアン:
「発泡させたシャンパーニュは、すでに先々代の王ルイ14世の時代から飲まれていたのですが、このエイドシック社の創始者であるフローレンス・ルイ・エイドシックは、この私のために1789年5月6日、プチ・トリアノンの離宮に来て私に、このメゾンの《フローレンス・ルイ》を献上していただいたからです。だから、私は、このシャンパーニュを推薦いたしました」

ケンジ1号:
「そうだったのですか。あっ、そういえばそうですね! 確かピペ・エイドシック社には、王妃にルイ・フローレンス・エイドシック氏が自慢のスペシャル・キュヴェを献上している絵画が飾られてますよね」

ケンジ2号:
「ねぇ、ケンジ1号。なぜ王妃はエイドシック社しか言わないの? だって、現在、エイドシック社は3社あるじゃない。なんで?」

ケンジ1号:
「それはね、王妃が生きていらっしゃった頃は、一つのメゾンだったんだよ。

このメゾンが創立されたのは1777年にもともと羊毛商だったドイツ人のフロレンツ・ルードウィッヒ・ハイドシックがフランスのシャンパーニュ地方の中心の町であるランスにはじめて訪れ、地元の同業者であるニコラ・ペルトワ氏と知り合い、8年後の1785年にペルトワ氏の娘と結婚し、ランスを本拠地としてエイドシックの名前で織物とワインの事業をはじめたのですよ。

で、社名もそうなんですが自分の名前をフローレンス・ルイとフランス風に改めたわけなのです。それで、1789年、王妃に献上したわけなのです。

そして、王妃御用達のシャンパーニュに選ばれ、シャンパーニュ事業は大成功を収め、次第に繊維業は影が薄くなっていった。これで、順風満帆と思われたのですがあの大革命によって、ルイの最大の顧客である国王一家や貴族達が次々と逮捕され断頭台の露と消えていく。さらにルイの一人息子が早死したため、1828年、3人のドイツ人の甥が事業を継承していったのだけど、意見の不一致で、1834年に会社が3社に分裂し、現在のようにエイドシック・モノポール社、シャルル・エイドシック社そして、ピペ・エイドシック社になった訳。

分裂当時は、現在の社名と若干異なってるけれどね。それで創業者の絵画を現在、ピペ・エイドシック社が管理しているわけ」

マリーアン:
「よーく、分かりました。でも、凄いわね! 私の絵画をお持ちだとは光栄ですわ」

ケンジ2号:
「僕もよーく分かりました。でもその極上品のキュヴェ・フローレンス・ルイは造られているの?」

ケンジ1号:
「現在では造られていないですね。ピペ・エイドシック社は、ジャン・ポール・ゴルティエがデザインしたボトルカバーが印象的なスペシャル・キュヴェをリリースしていますし、エイドシック・モノポール社は、ディアマン・ブルーを造っていますし、シャルル・エイドシック社は、以前はキュヴェ・シャンパーニュ・チャーリーを出していたのですが、残念ながら現在日本に輸出されていないのですよ」

マリーアン:
「そうなのですか…。でも、ピペ・エイドシック社のリリースした世界的に有名なファッション・デザイナーのデザインしたシャンパーニュってオシャレね。この私もあの当時は、一応ファッションのモードでは、最先端をいっていたのよ!」

ケンジ2号:
「最先端だったのー? スゴーイ!」

ケンジ1号:
「それはそうでしょ! なんと言ってもフランス王妃ですからね! 衣食住、全て最先端ですよ」

ケンジ2号:
「ねえ王妃。服のデザインは王妃自身がしてたの?」

マリーアン:
「いいえ、私ではありません。ベルサイユに来てから私のドレスを全てデザインし、仕立ててくれたのは私の専属デザイナーであるベルタン嬢よ。もちろん私もベルタン嬢と打ち合わせしながら仕立てて頂くのですが。 彼女の作るドレスはみな素晴らしいものばかりだつたわ。それに、彼女は商才もあったわね。例えば私と同じドレスが欲しいとオーダーされる貴婦人がいても、決してすぐには作らず、必ず時期をずらして作るの。 そうすることによって私のドレスや彼女自身の付加価値が高められ、なんとヨーロッパ一のデザイナーになり、ヨーロッパ・ファッション界のリーダーになったの。素晴らしいでしょ!」

ケンジ2号:
「じゃあ、王妃を最高のモデルにしたわけだ」

マリーアン:
「ある意味、そうかもしれないわね。どう、今回の美意識に対する私に意気込みを感じてくださったでしょ、皆さん!」

ケンジ2号:
「確かに感じたけど、王国の財政が悪くなるのも当然だね。美に対する女性の意識は、善しにしろ悪しきしろ凄いね」

ケンジ1号:
「また、怒るからその辺にしとけよ、2号。 王妃、今回もありがとうございました。また、遊びに来てくださいね」

マリーアン:
「とても充実してた内容だったわ。ありがとう。では、ごきげんよう。さようなら」

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