ワインショップ、イーエックス[eX-WINE]は、27分間の「通信販売」と「情報発信」をするサイトです。

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27分間

 

■フランス語の時間

フランス語の時間 大変なことになった。あと2年間でフランス語をマスターしなきゃならない。

英語でもいいのだろうけど、テイスティングのコメントはフランス語のほうがヴォキャブラリーもたくさんあるし、自分でもやってみたいし、それに……カッコイイ(なんと浅はかか)。

本を開いて、単語、文法、センテンスを何度も繰り返しつぶやく。思ったよりもいいペースで頭にはいっていった。

隣に座る子供を連れた雰囲気のいい女性が

「フランス語ですよね? 私も大学のとき、フランス語とってたんですけど……難しいですよね? あっ! ジャマしちゃってごめんなさい」

ボソボソとつぶやく声もだんだん調子があがっていった。

ふと、反対側を見ると女の子が僕のほうに向いた耳をふさいでいた。

「さっきからうるさいの」

 

■レシピの時間

レストランのスタッフとして、料理の知識はもっとも大切。素材、調理法、ソースに付け合せ料理。料理はますます複雑さを極めていっている。

トゥールダルジャンは伝統、歴史という言葉が大好きで、その辺のことも知っておくと理解がより深まる。

フランス語で打たれたレシピを暗記していると、となりの男性……

「ほう、イタリア料理か。今流行っているもんな。勉強したものが勝つんだ。その調子でがんばれば将来、店の一つや二つなんてすぐ持てるぞ。うんうん」

と自信に満ちた人生の先輩からのお言葉。

 

■ワインの時間

コンクールは筆記、テイスティング、料理との相性、サービスの4つの審査で構成される。見ているほうからはテイスティングですべてが決まるような感じがある。確かに当たった、当たらなかったは大きいし、出来不出来が明確ではあるけど。

でも実際はというと、出る側にとってそれはたいして大きな心配ではない。今さら慌ててみても、緊張してみても、急にワインが当たるようにはならないからである。

僕らがもっとも時間を費やすのは筆記の準備なのである。こればかりはいくら時間があっても「十分」にはならない。集めに集めた情報は無駄に終わってしまうものがほとんどなのだが、「もし、これが出題されたら……」と思うと見逃せない。

すべてをまとめたノートをやはり繰り返し、繰り返し読んでいく。この場合は暗記するのではなく、頭に染み込ませる。好きなアーティストの歌の歌詞が自然に頭に入っていくようにである。

すっと頭に入っていくものもあれば、何度読んでも染み込んでいかないものもある。

ある日、髪をかきあげなら読むと効果的なことに気が付いた。

 

■昼寝の時間

何もしないでいようと思うことが時々あって、そんな日には鼻歌をBGMに、周りの熟睡の娘たちに習って、昼寝でもしようかと試みる。

なかなか眠くならないもので、鼻歌も4曲目にうつる。もうすぐ着くよって、そんな頃にやっと、ストンと落ちる。一番気持ちのよいところで、

「麹町、こうじまちー!」

と、起床のアナウンス。

 

■27分間

それは僕が通勤のために電車に乗っている時間で、思えばこのわずかな54分の1日の積み重ねがあって、今日の僕がある。

そう、なににも変えがたい時間といってもいいひとときなのである。

 

■配属

新入社員にとって最初の運命の瞬間は配属である。目当てのセクションにいけなかったとこぼすばかりか、会社を辞めてしまう仲間もいた。

僕の配属先はトップ・オブ・ザ・タワーというブュッフェスタイルのレストランだった。できればメインダイニング、もしかしたらトゥールダルジャン! と期待を膨らませてはいたが、そんなにがっかりはしなかった。

自分でも仕事ができるかどうか解らない僕に与えられた仕事はそれほど複雑ではなかったので、「将来、何かと役に立つ」との父のすすめに従い、英会話スクールに通い始めた。それが10年後に自分を救ってくれるとはもちろん期待すらもしてなかった。

 

■邂逅

そして、そのブュッフェレストランでソムリエを目指すきっかけとなる方と出会う。その方に、

「お前は必ず日本で優勝ができるソムリエになれる」

と言われた。1990年のこと。

その後もたくさんの心ある人との出会いがあった。そんな方々の後押しのおかげで入社1年、もっとも異動が難しい時期に、晴れてメインダイニングへの配属が決まった。

「勉強してるんだって? あそこのテーブルでワイン開けてきていいよ」

と声をかけられ、調子に乗っていた。そんな僕にバケツで水を引っ掛けたのが元トゥールダルジャンのメートルドテルの上司だった。

「料理のこと何も知らないでワインなんか嗅ぎやがって! 今度、俺の前でワイングラス持ってたらケリ入れるぞ!!」

もちろん大嫌いだったその上司はその翌年、僕にとって初の渡仏を経験させてくれた。

 

■Change the World

ラッキーとはいえない職場、理不尽な上司。どこにでも転がっているようなことだが、今となっては素晴らしい経験になっている。

一見、ごくあたりまえな日常が恵まれた環境になっている。それに気づくのはそんなに難しいことじゃない。アングルを変えてみることでずいぶん違ってくる。

忙しさに追われるサービスをスピードと捉え、

指導者のいない状況を責任と捉える。

回り道を充電、助走期間、

逆境を訓練、

不運を転機と捉えること。

そして、「あと30分しかない」を、「まだ30分ある」と考えることだと思う。

すべては捉え方次第。

僕はこれからもこの27分間を大切にして進んでいきたい。

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