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第18回 たった2樽のグリオットに世界が燃える ―クロード・デュガ訪問―
■クルティエが年に2度しかアポをとれない!クルティエ、いわゆるワインの仲買人でさえ、1年に2度しかアポイントが許されないというドメーヌ、クロード・デュガを訪問してきました。 クロード・デュガといえば、今、世間のワイン好き、ワインマニアが血眼になって探しているワインは? といったとき、恐らく一番最初に名前があがるドメーヌではないでしょうか。 このデュガ訪問は、絶対にもっと多くの方に何らかの形でお伝えしなくては……と、ずっと思っていました。そしてやっと、フロム・ザ・ヴィンヤードの場で皆さんにお伝えするチャンスがやってきました。
■パーカー氏は常に高評価
事前に調べておいた情報によると、とても謙虚な方とのこと。パーカーさんの本では「恥ずかしがり屋で控えめな人」と紹介されていました。 実際にお会いしたデュガ氏は、まさにその通りの方! 私が訪問した日は優しい印象を与えるアーガイルのセーターをお召しになり、終始穏やかに笑顔で過ごされていました。発言もとても控えめ。 ところが、いざワイン造りのお話になると、途端に言葉の端々に頑固なまでの意志の強さが表れ、確固たるフィロソフィをお持ちでいらっしゃることがひしひしと伝わってきます。 「デュガ」という名前では6、7代目になるそうです。子供が多かったことから、引き継ぐ度に土地がいくつにも分かれてしまったとか。 ブルゴーニュお決まりの相続問題と言いますか、たとえモメたりすることがなくても、個人所有の畑は複数の人間に相続する際、必ず均等に引き継ぐという法律があります。これがブルゴーニュの畑の細分化を進め、ワインの奥深さを生んだといっても過言ではありませんが……。 同じ「デュガ」の名を持ち、やはり高く評価されているベルナール・デュガは、クロード・デュガさんの従兄弟にあたります。お父さん同士がご兄弟。私がワイナリーを訪問した日、ラッキーなことにベルナールさんのワイナリーも訪問させていただくことができました。 お二人はとても対照的で、クロード・デュガさんがおしゃれで控えめな文学青年であるのに対し、ベルナールさんは見た目から農家のご主人そのもの、畑にいることが何よりも幸せといった感じでした。
■ぶどう造りもワイン造りも、まったくの自然体で。ヴィラージュ(村名ワイン)は、全ての区画(若いのも含めて)のぶどうを集めて造ります。そしてほんの少しだけ糖を添加するそうです。 「ガスが多過ぎる傾向がありますが、これは天然のガスです。試飲の際には予め瓶を開けておくことをおすすめします」 とクロードさん。 ドメーヌ・クロード・デュガは、強さと優雅さが同時に存在するようなワイン造りを目指しています。クロードさん曰く、 「ワインの強さは土地から得られ、優雅さはピノノアールから得られる」 とのこと。 高級なワインを造る際は肥料を使用しません。そのためにはまず、土地を充分理解しなくてはいけないと言います。 肥料を使ってしまうとピノ・ノワールがなり過ぎ、優雅さばかりが出てしまい力はなくなる。 「土地は苦しめるべきである」 とクロードさんは信じています。極力人の手を加えず、自然のままにぶどうもワインも造る。このことを何度も何度も彼は話していました。
■「自分はいっさい調べることをしない」。私が訪問したのはちょうど2000年の5月。 まずは樽の中に入っていたワインは1999年のもの。1999年のワインを樽から、その後、瓶熟させている1998年のワインを試飲させてくださいました。 ―99年のぶどうの収穫はどうでしたか? 酸が少ないと聞きましたが。 「私はそういうことは一切調べません。自然にまかせています。もしも酸味が欠けていたとしても、他の物がそれを埋め合わせてくれるでしょう。たとえばタンニンに対して同じです。 私はあまり技術的なことはしません。分析も、もちろん土壌の分析も然り、です」 良い素材(ぶどう)をつくる、良い素材がとれたら、そのあとは自然の働きに任せるんだと話してくれました。
■「バイオ栽培していますか?」という質問にクロードさんはバイオ栽培を行っています。が、それを謳ってはいません。というのも、バイオダイナミクスと謳うにはものすごく複雑で大変な規則や義務がついてきます。それに縛られることを嫌がり、バイオ栽培についてはあまり触れません。 しかし、クロード・デュガのぶどう栽培は事実上、全てバイオでした。 今までにたくさんのワイナリーを訪問してきましたが、実際にはそうでも謳っていないという生産者はたくさんいました。 「論理にかなった戦法」 とおっしゃっていましたが、無理をせずに必要なときだけ薬剤を使うとのこと。当然言うまでもなく、いらないときは使いません。 肥料や除草剤を使わないかわりに、ミミズが働いてくれています。目に見えない微生物なども。 「土の中にいる生き物が働いてくれているんだ」 とクロードさんは笑っていました。 これはこっそり教わったのですが、本当のところは月のこともきちんと見ているし、どちらかといえばバイオ的なんだそう。 「でもそれはわざわざ言う必要もないことで、単に自分の考える造りをしていたらそうなっただけですよ」 ここもやはり、自然体でいらっしゃるクロードさんでした。
■グリオットとシャルム
写真でもお分かりのように、グリオット・シャンベルタンはなんと、このたった2樽しかつくることができません。このごく限られたワインを世界中のファンが買い求めるため、今や幻のワインに……。これは仕方ないことですが、あまりにも価格が高騰しすぎてしまうのはやはりファンとしては痛いところです。 今回、そんな貴重なワインを、樽から試飲させて下さいました。 グリオットはクロードさんが造る他のどのワインよりも凝縮感に溢れ、果実の甘さが際立っています。どうやらこれが畑の特徴とのこと。 グリオットの畑内にあるクロードさんが所有する区画は、小さな岩石の土壌をしています。これは他の岩石より鉄分が含まれて、色が濃く、オレンジ色に見える土壌なのだそう。 「この土壌が他とは違う酸味と、存在感のある果実の甘さをグリオット・シャンベルタンに与えている」 とクロードさん。 シャルム・シャンベルタンも試飲させていただきましたが、シャルムもグリオットに負けない豊かな果実味を持っているように感じました。 クロードさんが考えるグリオットとシャルムの違いは 「グリオットはこちらから迎えに行かなければなりません(グリオットの特徴を探そうとしなければならない、という意味だと思います)。一方、シャルムは個性が強いのですぐわかります。 グリオットは非常に繊細ですから、我々がそれを理解してあげなければなりません。はっきりとした性格を持っている人はシャルムを好むでしょうし、逆に繊細な方はグリオットを好むのではないでしょうか」 とのこと。 これからは「グリオットが好き」と言うことに決めました(笑)。
■後継者問題―後継者の問題は無いのですか? 「大丈夫です。娘が一人、すでに一緒に働いていますし、もう一人、息子もじきに働きだします。多分二番目の娘も……」 ふと、優しいお父さんの表情になっていました。 長女の方が21歳、息子さんは18歳そして次女の方はまだ13歳になったばかりというクロードさんはとても嬉しそうなお顔。 「私は昔から彼らを畑に連れて行って、仕事の辛さよりも楽しさを見せる努力をしてきました。簡単なことではないけれど、楽しみを知ると、すぐに中に入ってきますよ」 私にも娘と息子がいて、二人とも同じワインの世界で働いていますが、ワインの楽しさ、二人に伝えることができているんだろうか? と、クロードさんを通して考えてしまっている自分がいました。 自分の子供たちに、また、血の繋がりはなくても、次の世代の若者たちにワインの楽しさを伝えられるといいですね。 訪問前の下調べ(今回はちゃんとしました!笑)では、さまざまな雑誌に取り上げられていることからも、もっと近代的な造りをしているのかと思っていました。 実際にワイナリーを訪問し、クロードさんとお話ししていると、正反対。どっぷり自然に浸かっています。ワインに対してだけではなく、あらゆる面でも自然と向き合っていらっしゃいました。 「人間はもっとシンプルに生きるべきです。自然はときには厳しいもの。暑さや寒さと戦いながら働くことは決して楽ではありません。しかし、精神的に安定することができます」 私ももっと、いろんな雑念をぬぐい捨て、ワインの良いところを見て、味わって、紹介していくような、そんなシンプルな生き方ができたらいいな、と思いました。 なんて、ちょっと甘いですかね(笑)?
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