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第16回 アメリカ、ナパ・ヴァレーのフロッグス・リープ
■シンボルマークはカエル
彼らがワイナリーを設立した場所は、もともとカエルの養殖場だったということからついた「フロッグスリープ」という変わった名前。1981年からの歴史はカエルとともに歩んできました。 1994年にはラザフォードにあった荒廃しきっていた古いバーン(納屋)を改造し、ワイナリーとして改築しました。
「まずは畑にいきましょう」
■フィロキセラでやられていた畑を復活させました「1994年に買ったこの畑は、ほとんどがフィロキセラにやられていた。近代的な農法で肥料を与えすぎたり、除草剤や多くの化学薬品によって畑が死んでしまっていたことも原因だと思う」とは、畑への愛情を感じさせるジョンの言葉。
フィロキセラにやられてしまった木も、植え替えるのではなく、『復活』させたんです。 まず50cmの深さまでカチカチに固くなった畑を掘り起こし、土の中に酸素を送り込み多種類のカバークロップ(下草)を植え、春にその草を刈って地面に取り込みます。これによって地中の微生物が活性化され、有機物を増やしてくれる、という理論だそうです。 地面の深いところまで根がおり、そして栄養分のある自然の水を吸収させるために、灌漑を行わないとのこと。なるほど。ぶどう木自身の生命力を強めるわけですね。
■ワインの中にその土壌の、土の感じが入っていませんか?
ジョンはほこほこの土をスコップですくって見せてくれました。 「このバクテリアが空気中の窒素を吸い、これを草の中に戻してくれる。自然はこんな風に自分たちでお互いの面倒をみてくれるんです」 もう、土までもがいとおしくてしょうがないと言わんばかりのジョン。土の匂いを嗅ぐととてもいいにおいがするんですね。 ジョンは、根っからのファーマー。麦藁帽子をかぶって、長靴で畑を歩き回る姿が本当に地に付いています。土の匂いを嗅がせてもらったとき、「この人、本当に土の上に生きてるんだな」って思いました。
■カリフォルニアの歴史はフィロキセラとともにジョンは「フィロキセラはカリフォルニア産」説に否定的です。 「ひとつ覚えておいて欲しい、カリフォルニアにはフィロキセラはなかった。もともとの原産はアメリカの南東部で、大量のアメリカ人が東海岸からここまで始めてきたのは1848、1849年のゴールドラッシュの頃で、それまでここにはインデアンしか住んでいなかった」
1864年。ヨーロッパはフィロキセラという小さなアブラムシによって全土の畑が全滅し、ぶどう木は全て枯れた……。ワインの歴史には大きな出来事ですね。 そのときにフィロキセラから逃げるようにワイン生産者は世界各国に移動し、また、今までワインを造っていなかった土地でもぶどう畑を開墾するという動きが活発になりました。それはナパヴァレーでも同じこと。ナパにもどんどんと新しいワイナリーが出来、そのワインがヨーロッパへ輸出されていたそうです。 当時、ワインが不足していたヨーロッパの人たちは、多くのカリフォルニアワインを消費していたとのこと。 その後、本格的にフランスやイタリアの生産者が次々と、ぶどうの苗木を持って移民してきました。そのヴィニフェラ種の苗木にフィロキセラが付いていた、そしてそこから今度はナパヴァレー、カリフォルニアへの被害が広がっていった、とジョンは言います。
■ワイン産業の歴史を、ほんの少しだけここで少しカリフォルニア(というより、アメリカ全土ですね)のワイン産業の歴史をおさらいしましょう。 1864年のヨーロッパ全滅に次いで、1880年から1890年代にフィロキセラ渦が広がったカリフォルニア。畑がバタバタとやられていきました。 じきにフィロキセラに耐性のある台木を使う対応策が生み出され、その後ヨーロッパでもワイン産業が復活し、消費量に対して生産量が追いついてくると、今度はカリフォルニアに打撃がきます。輸出ブームに乗り切っていたカリフォルニアは儲けが出ないどころか、ワインが売れなくなりました。 そんなことを繰り返しているうちに、今度はアメリカのワイン産業を一気に崩壊させる「禁酒法」が発令されます(1919年)。これは「商業を目的としたアルコール飲料の生産と販売を一切禁止する」という、信じられないほどひどい条例。 特例として許されていたミサ用のワインを造って細々と生き延びたワイナリーもありましたが、再度本格的なワイン産業が復興したのは1960年代のこと。長く、静かな時間があったわけです。 「ナパヴァレーは復興からまだ30年しか経っていませんが、僕たち、ここに集まってきた人たちの情熱と言うか……。土壌に関しても気候に関してもみんな一生懸命研究を重ねました。情熱が高い品質のワインを生み出すことを実現してくれたと思っています」 ジョンは胸をはって、そう言ってくれました。
■フロッグスリープのオーガニック栽培方法とは1980年後半に、またフィロキセラがカリフォルニアを襲います。今度は「タイプB」といって、新しい種類のフィロキセラ。今までよしとされて使ってきたAXR1という台木が全く役に立たなくなりました。 1990年代にわたって、カリフォルニアではほとんどのワイナリーが多大な経費をかけて植え替えを行った事実に対し、ジョンは 「フロッグスリープのこの畑では植え替えをせずにそのままぶどうの木を残し、オーガニック栽培をすることでフィロキセラから復活させました」 と話してくれました。オーガニックにはそれだけの力がある、と言うのです。 「現代の農業は化学薬品、除草剤を撒くことによってここにある青いもの全てを取り除きます。それはつまり、雑草というものを全部取り除いてしまうことになります」 「土の中にいる微生物が自然の肥料を消化し、栄養分を土の中に戻してくれます。雑草の役割はそこにあります。化学薬品や除草剤を撒くということは、そういったものを全部排除してしまうことに繋がります」 オーガニック栽培に啓蒙の深い彼はさらに深く語ってくれます。
これからがとても楽しみで目の離せないフロッグスリープです。なんといってもジョンのすばらしいフィロソフィーと人間性が、これからすばらしいカリフォルニアワインを背負ってくれるのではないかと期待しています。
■オマケのお話《1》 風水と禅自然農法、オーガニック、バイオダイナミック……。なんだかどんどんエスカレートしているような感じも受けましたが、彼はもうひとつ凝っているモノがあり、私たちを驚かせてくれました。なんとそれは、風水。
■オマケのお話《2》 バスケットボール・ゴール一通りセラーの案内をして下さると、最後にワインセラーの入口にまた戻ります。何かと思うと、壁にはバスケットボールのゴールが2つついています。 「うちに来た人はここにシュートしてもらわないとね」と言ってボールを渡されました。
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