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第8回 イタリアワインのプロフェッショナル2人と見つけた、モッレリーノ
■まずは行ってみないと! 噂のモッレリーノ・ディ・スカンサーノサテライト・フィレンツェを担当している横田昌司ソムリエから興奮しながらの電話がありました。 「今イタリアですごいワインがあるんですよ!」 この1本の電話で、なんとイタリア旅行へ行くことに。聞いてみるとあのサシカイアのあるボルゲリの近くにスカンサーノという地区があり、今キャンティ地区の造り手たちがこぞってぶどう畑をそこに購入しているとか。 さっそくスカンサーノについて調べてみました。スカンサーノで造られるワインはモッレリーノ・ディ・スカンサーノというDOC。お恥ずかしいことですが、最初モッレリーノがぶどうの品種だとわかりませんでした。キャンティを造るサンジョヴェーゼ種の別名です。 モッレリーノの語源はモレッロという単語から。「昔、スカンサーノ地方で馬にかけていたマントをそう呼び、マントの色がこの地で造られるサンジョヴェーゼ種の色に似ているから」とのこと。いろんなことを調べるうちに頭の中でモッレリーノのことがどんどんふくれあがり、頭から離れなくなってきました。 でも、とにかく行ってみないとわかりません。タイミングよくヴェローナでヴィニタリー(イタリア版ワイン・エキスポ)が開催されることが決定していました。イーエックス・ワインの中でもイタリアワインのプロの2人、山本諭ソムリエと横田昌司ソムリエに同行してもらい、さっそくイタリアへ!
■モッレリーノを求めてヴェローナへ!
ミラノからヴェローナまで電車で1時間、ちょうどヴェネチアとミラノの中間にあります。会場はヴェローナの駅から歩いて10分のところ。 会場でまず目にはいったのは、「シチリア」のブースです。 大きな建物が10棟ほどあり、それぞれ州ごとに分かれています。シチリアは今とても人気があるらしく、大きくとられており、そこを目当てに行く人もいっぱいです。しかし、我々が目指すはトスカーナブースです! トスカーナブースに行くとまず目に入ってくるのはブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、キャンティ、ヴィーノ・ノビレ・モンテプルチアーノ……。堂々たるDOCGの面々が。途中、ミーハーな私は寄り道しながら、モッレリーノのブースに到着しました。 まず、全生産者の全アイテムを飲んでみました。もしもひとつでもテイスティングをしないでいて、それがすばらしいものだったということのないようにと、真剣なテイスティングです。横田君の通訳で、山本ソムリエと私の3人のチームでとにかくテイスティングを黙々と続けます。
■ポッジョアルジェンティエラ今回のテイスティングで感じたことは、どこの生産者のワインを飲んでも、とにかくレベルが高いということです。 濃い色調、たっぷりと果実味があり、ミネラル感もあり、パワフルなものが多かったように思います。本当に驚きました。きっと良いぶどうのできる土地なんだろうと想像ができます。 キャンティエリアの造り手たちが、競って土地を買い取るのもうなづけます。 さて、色々なテイスティングをして中で、どうしても気になる生産者がありました 横田君、山本さんに聞くと同じ答えがかえってきました。ワイナリーの名前は「ポッジョアルジェンティエラ」です。 小さなブースですが、素敵な女性と男性がふたりでブースにたっています。 男性はオーナーのジャンパオロさん。話をしてみると、日本のことにとても詳しく、筑波大学でお米の研究をしていたとのこと。群馬に2年間住んでおり、とにかく日本ファンで日本食が大好きであると情熱たっぷりに聞かされました。 「とにかくワイナリーにきてみてください」とおっしゃって下さったので、さっそくうかがうことにしました。
■スカンサーノの街へ、ワイナリーを訪問しました。
フィレンツェからシエナを過ぎ、さらにそこからグロセット方面に進んでいきます。山がちなキャンティのエリアを抜けて、シエナの街を過ぎる頃には次第に景色も変わっていき、なだらかな山の間に広大な麦畑も目にすることができます。
「まずはワイナリーの中をみませんか?」 まずは設備をみせていただくことに。母屋のとなりに醸造所がありました。 ジャンパオロさんは 「まだまだ自分たちは若い小さいワイナリーでこれからなんです」 「ここでワイン造りを始めたのもまだ4年前で、これから少しづつ設備を整えて、来年までにはこの隣に新しい醸造所ができ上がります」 とおっしゃっていました。 タンクの中はすべて空っぽ、小樽の中に瓶詰めを待つワインたちがいるだけです。
■ぶどう畑を案内してもらいました。
「僕は畑が何よりも大切なんです。自分たちのワインといえるものは自分たちの畑の中からしか造れません。つまり、ワインを造るのに他の人がつくったぶどうは絶対に使わないし、自分たちのぶどうも他の人には売りません」
キャンティの畑とは違い、全くの平地にぶどうは植えられています。 聞いてみると海抜0メートルで海からの風を受けて風通しがとてもよく、日中は日が当たりがいいおかげで暖かく、夜は風の影響でかなり冷えるそうです。 「日中の暖かさはぶどうを成長させ、夜の涼しさはワインに酸味を与えてくれます」 スカンサーノはイタリアワインを世界中に知らしめたサッシカイアの生産地であるボルゲリによく似ているので、クオリティの高いワインを生産することができます。 植えられてまだ3年目の若いぶどうたちが元気良く新芽を吹き出していました。
■本家で再び、テイスティングです!そんな元気いっぱいのぶどうが植えられた畑を見学した後、いよいよテイスティングです。
※「基本的には都会を離れて農家の暮らしを体験することを言いますが、ここのアグリトゥーリズモは家族連れがゆっくりバカンスを楽しめるキッチン付きのペンションというような意味なんです」と。 他のぶどうは買わないし、他へぶどうを売らないという哲学を持つジャンパオロさんですが、 「少ない種類のワインでも、どれも高品質なものにしなければならない」 という強い姿勢も持っていらっしゃいました。
■「ベッラマルスィリア」と「カパトスタ」2種類のワインは「ベッラマルスィリア」、もう一つは「カパトスタ」です。ちょっと紛らわしいのですが、2つとも商品名なんです。 モレッリーノ・ディ・スカンサーノというのは国に登録されている原産地呼称(DOC)です。要するに国が与えてくれるワイン名ですが、ベッラマルスィリア、カパトスタは彼らがつけたワインの名前です。 ですから、国によるワインの区別はどちらもモレッリーノ・ディ・スカンサーノになり、後ろのエチケットにはモレッリーノ・ディ・スカンサーノの名前もちゃんと入っています。
お米の研究のために筑波大学にいらしたお話を思い出して聞いてみると、やはり日本酒の試飲用の「蛇の目」というグラスをくるくる回すイメージなんだそうです。 「ベッラマルスィリア」のほうはモッレリーノ(サンジョベーゼ種)だけで作られる、太陽の恵みをたくさんに受けた果実味いっぱいのワインです。ジャンパオロさんがおっしゃるには「ベッラマルスィリアの方は、この地方の猪などの獣の肉を使ったミートソースのパスタや、ラヴィオリのクリームソースなどにあわせると美味しいですね」とのこと。 一方「カパトスタ」はまだまだしっかりと渋みやスパイスを感じる長熟型のワインです。今でも十分に楽しめますが、まだまだ5年10年、いえ、それ以上とっておくことができそうです。 こちらもやっぱり「獣の肉の煮込みや、トスカーナ地方の羊の乳でできる熟成させたペコリーノ・チーズなんかも美味しそうです」とジャンパオロさん。 まだまだ若く小さなワイナリーですが、いいワインを世界のファンたちへ提供していこうという姿勢が、自分たちイーエックス・ワインが抱いているイメージに重なります。 このワインをぜひとも自分たちで日本の皆さんに紹介していきたいと思いました。 普段は気さくなジャンパオロさんも、畑、醸造、ワインの話となると真剣です。今回、畑に訪問することで、彼の情熱を体で感じることができて本当によかったと思います。
■オマケ話。初めての経験でした……。 ヴィニタリーでまさかと思っていました……。 それもいつ盗られたのかまったくわからず、昼ご飯をたべようとお財布をひらくと中身が空っぽです。 いやな予感がし、パスポートのケースをみると予感通り、パスポートがありません。 「えっ、いつ?」って感じです。 そういえば、キャンティのブース個室でテスティングをしていたときに足元においておいたバッグの位置がちょっとずれていたかもしれません。 でもあとの祭りです。 「どうしよう!」 横田ソムリエがお友だちに電話をしてくれて、 「とりあえず、警察に行って盗難届をだして、それからミラノの領事館に行って!」 「領事館の人に電話をしておいたので、とにかくすぐにミラノまで行って!」 ものすごい剣幕でした。早速ヴェローナの警察とミラノの領事館に行くことに。 ベローナからミラノまで300キロ。行きました。車で片道2時間かけて……。 ミラノまで無事行きましたが、それからが大変でした。 「写真は?」 何にもありません。 というのは私のトランクはベローナの駅のロッカーの中にあるのです。 「じゃあ、だれか保証人に」 横田君に感謝です。やっとの思いでパスポートを取得し、無事に日本に帰ってくることができました。 今回の教訓、 だから、現在の私のパスポートの写真は、ミラノの写真屋さんで撮っていただいた白黒の写真です。
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