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第7回 私の原点、ドイツを再訪してきました
■パリからドイツへ500kmの日帰りドライブパリからドイツのモーゼルへ、約500km(東京←→大阪間と同じ距離です)を日帰りでドライブしてきました! 今回のコースはまず、パリからシャンパーニュ地方のランスを眺めながらハイウェイを走り、ルクセンブルグでガソリンを補給。いよいよドイツに入ります。友人夫妻はコブレンツで仕事があるとのことで、私は手前のベルンカステル村で途中下車。のんびりと川くだりを楽しみます。 友人夫婦が戻ってきたら拾ってもらい、パリまで戻る途中のピースポート村、トリアー村を散策し、パリまでの残り350kmを一気に戻ります。 まさか、途中にあんな事件が起こるなんて!?
■パリ ―突然のお誘いに即答―先日メールマガジンにも書いたのですが、私が10月初旬に仕事でパリを訪れたときに、思いがけずドイツへ行く機会に恵まれました。 パリに住む友人夫婦がお仕事でモーゼルへ行くというのです。 私がお酒屋さんに嫁いだ20年前、日本ではドイツワインが全盛で、私もその美味しさの虜になってワインの勉強をはじめたものです。ドイツワインは私にとっての原点のようなもの。思い入れも深いんです。皆さんにもありませんか? 思い入れの深いワインって……。 「ドイツへ行くけどどうする?」と宿泊先のホテルへ電話をもらったときに予定も確かめずに「行く!」と即答しちゃいました(笑)。
■大都市ランスを左手に見ながらパリからドイツへはなんと車での日帰りドライブでした。パリから目的地のモーゼルまでハイウェイで500キロ強、車で4時間。日本でいうと、ちょうど東京から大阪までの距離です。 目的地はドイツのモーゼル! 6年前に訪問して、とっても感動した記憶があり、わくわくしながらの旅でした。 パリからモーゼルに向かって最初に出会うワイン産地がシャンパーニュです。
その後はドイツに入るまでは主要産地はなく、延々と続く田園風景をひた走ります。ちょっぴり紅葉がはじまり、とってもメルヘンチックです。 「フランダースの犬」を連想しちゃうような景色でした。
■ルクセンブルクでガソリン補給さらに2時間ほど走ると「ルクセンブルク」の標識がでてきました。人口40万人、国の広さが2600万平方キロの、神奈川県よりやや大きい程度の国だとか。 この小さな国の田園風景も今までに輪をかけたようにステキで、まるでおとぎ話にでてきそうです。 「名前は知っていたけれど、こんなところにルクセンブルクってあるんだ」 と恥ずかしながら、はじめて知りきました。 みなさんはご存知でしたか? 私だけ? 所得税は高いものの物品税が安いため、フランス、ベルギーなどからわざわざ多くの人が買い物にくるらしいと教えてもらいました。実際にサービスエリアに入るとガソリンを入れるのに、長蛇の列ができています。 我々もガソリンを補給して一路モーゼルへ!
■友人夫婦はコブレンツへ、私はベルンカステルで途中下車。モーゼル川沿岸は有名、無名のワインの村が150以上もひしめいて、リースリング種の数々の名ワインを生み出しています。 友人夫婦はお仕事でコブレンツへと向かいますが、私だけ100kmほど手前のベルンカステル村で途中下車。 「5時間後にベルンカステルの村で待ち合わせましょう」と一人になりました。ちょうどお昼の12時のことでした。 5時間もこんなステキな村でどう過ごそうと考えただけでもウキウキします。 キャッシュコーナーへ行き、フランをマルクに交換。「まずは腹ごしらえを」とレストランにはいりました。 メニューを見れば当然のことながらドイツ語で書かれておりチンプンカンプンです。隣の人たちの頼んでいる食事を横目でみながら選びました(笑)。 軽めの昼食にソーセージとザワークラフト(シュークルート)をと思い、どうやらそれらしきメニューを頼み、ついでにモーゼル特有のレーマーグラスでハウスワインを頼んでみました。
■ベルンカステル村でモーゼル川くだりを。
実は、絶対にモーゼル川くだりをしようとパリを出るときから決めていました。乗船時間は1時間、料金は13マルク(日本円で約750円)です。さっそく乗り込みモーゼル川くだりです。 川を下って行くと、川沿いに200台くらいのキャンピングカーが駐車しているキャンプ場を発見しました。秋の始まりの寒い時期になぜ? それもウィーク・デーになぜ?
モーゼル川の両岸は素晴らしい古城と急斜面のぶどう畑が続き、壮観な眺めを大満喫! 「仕事をしてきます」と日本に残してきたスタッフにはとても言えません(笑)。
■ベルンカステルの町を探索。さらに観光!
カフェでは路上までテーブルを出して、みんなレーマーグラスを片手にワインを飲みながらおしゃべりしています。さすがベルンカステル村、飲んでいるのは白ワインです。
見たことのあるラベルや有名なワインがいっぱい並んでいます。 「JJプリュム」 知っているワインが並んでいて嬉しくなります。 「そうそう、やっぱりここはモーゼルで、だからこのワインのラインナップなんだわ。私のワインショップに並べているワインと一緒!」と改めて自己満足。 眺めていると5リットル入りガラス瓶が20個くらい木製の棚に並んでいます。
その下の籠に、250mlくらいの透明の瓶に入った蒸留酒が無造作に置かれています。「シュナップスよ」とレジにいる店員の女性が答えてくれました。 アルコール度数の高いホワイトスピリッツ全体をドイツではそう呼びます。 実は永野家ではかかせない飲み物です。我が家ではビールとビールとの合間にいただいています。 それはときとして、ジンだったりフルーツブランデーだったり、ペルノだったりと時々かわったりします。 毎晩我が家で飲んでいるものとこんなところで巡り合ってちょっと嬉しくなっていました。
■ベルンカステル ―モーゼルの宝石、ドクトールの畑!―確か、この町の裏手にドクター・ターニッシュ家の単一畑である「ドクトール」の畑があると聞いたのですが、ベルンカステルに来てそこに行かなくてはと、探してみることにしました。 そして急坂を歩いて行くと、ありました! 山の頂上に雑誌でみた白い小屋が。
そして門の上の方をみると45度くらいの傾斜にぶどう畑! ぶどうの樹齢もとても古そうです。 ぶどう木にはなんとまだリースリングのぶどうがついています。
そういえばラングドックにもこんな土壌のところがあったなあなどと思い出しながらみていると、貴腐菌のついているぶどうの木も発見! 誰もいない畑で一人はしゃいでいました。
■ドクトールの由来「ドクトール」という畑の名前にはこんなお話があります。
12世紀、トリアー村の司教であったポエムント2世が重い病にかかり、どんな高価な薬も効果なく、侍従の医者もさじを投げていました。そこにある農夫がベルンカステル村随一の南斜面の畑のワインを司教に手渡し、そのワインを飲んだとたんに司教の病がぐんぐん癒えてしまったそうです。 司教は農夫にお礼としてたくさんの褒美を与えたのと同時に、彼の持つ畑に「医者(ドクトール)」の名を冠することを許したのだそうです。これがドクトールという畑の名前の由来といわれています。 実際にベルンカステル村に住む方のお話を聞くと、この地に雪が降ると、真っ先に雪が溶けるのがこの区画だそうです。 数々の優れた畑を有するベルンカステル村の中で、最も太陽の恵みを与えられた畑。司教さんが重病から回復できたという伝説も本当かもしれません。
■ベルンカステル村のワインはどうして優れている?ベルンカステル村はドイツのモーゼル地区で最も優れたワインを産出します。
そしてその「シーファー」という土壌は、ミネラル分を多く含み、ワインに力強い芯を与える一方、日中の熱を吸収し夜間に輻射熱を発して畑を暖めるという効果もあります。 それがこの村のワインを特別なものにしている大きな要因となっており、偉大なワインが産出されているのです。
■ここで大事件発生!メールマガジンをご覧になっていただいた方にはご存知の通り、ベルンカステル村で大事件が! 仕事を終えてコブレンツからベルンカステル村へ迎えに来てもらい、落ち合うことになっていたのですが、会えないんです。迷子になりました。 友人夫妻とは携帯電話で待ち合わせをしようということになっていたのですが、「携帯の電源なくなってしまった!」の一言を残して電話が切れ、その後はいくら電話しても留守番電話に。 それはないでしょう!!! 約束の時間になってもひとりぼっちです。 といいつつ、友人夫妻が私を見つけてくれるのを期待しながら、そんな待ち時間を利用してメールマガジンを書いていたんですけど……。 小さな村ですから、見つかりやすいテラスで待っていた私をどうにか友人夫婦が見つけてくれました(よかった)。 そんな大事件があって、私の人生で始めての迷子を経験した村、ベルンカステル村を後にしました。 友人夫婦と合流してから、車でベルンカステルの町とモーゼル川と急斜面のぶどう畑が一望できる高台にも行ってみました。 先ほど一人で見に行ったシーファーと呼ばれている剥き出しになっているスレート土壌の岩壁、そして夕陽のあたるドクトールの畑。「太陽の恵みを与えられた畑」と言われる通り、本当に最後の最後まで夕陽があたっていました。
「あそこのね、急斜面のところがゴールドトロッフェンで単一畑(アインツェラーゲ)になるんですよ。 そして平地にあるぶどう畑がミフェルスブルクで集合畑(グロスラーゲ)になるんです。 こうしてみるといつまでも陽があたっているところと早くに日陰になってしまうところとがよくわかるでしょう? 最後まで陽があたっているところがゴールドトロッフェンの畑になって評価の高いワインができるんです。
単一畑は急斜面に、集合畑は平地に。 実際に目にして、やっと本の中で勉強していたことがわかりました。もう感動、感動です。
■最後の寄り道。ドイツ最古の都市、トリアーで辛口リースリングを。
すでに暗くなってきたのでちょうど世界遺産の遺跡の前に、ドイツらしい小食の華やかなレストランがあったので、そこに入ることにしました。中は観光客ではなく地元の方ばかり。 メニューには辛口のリースリングが多いことに気がつきます。せっかくなので頼んでみることにしました。ボトルで2000円くらいです。 食事は豚足の揚げ物や美味しいトマトソースを使ったパスタ、サラダなど軽めにすませることにしました。 このあとはまた数時間かけてパリまで帰らなければなりません。観光しながらパリへ近づいてきていても、まだまだパリまで350kmくらいあるはずです。 いっぱい注文したいところですがそこはちょっとがまんをしました。 辛口のリースリングはというと、さすが、酸がしっかりとしていてミネラル感も充分にあり、クオリティの高さに驚きました。ドイツでは辛口のワインが増えていると聞いてはいましたが、このレストランも辛口のワインが多くリストアップされていました。
■「ドイツを制するものは……」
今回思いがけず、パリからドイツへ日帰りドライブできました。 実際に太陽、モーゼル川、急斜面の畑、スレート土壌などを見て、ブルゴーニュ、シャンパーニュ、ボルドー、そしてカリフォルニアなどとまた違ったテロワールがありました。 それを充分いかしてそのテロワールに適しているドイツワイン造りが行われていることを見て、ドイツワインの将来を感じました。
石田博ソムリエたちとの合言葉のようになっているものに、こんな言葉があります。 「ドイツを制するものはコンクールを制する」 この言葉が私の脳裏からはなれません。 自分の原点であるドイツワインに戻ろう。そんな気持ちを持てたドイツ訪問になったような気がします。
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