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第5回 フランスの庭園、ロワールを旅してきました
■フランスの庭園、ロワールを旅してきました。絶対に行ってみたいと夢にまで見ていたロワールツアーが2000年に実現したんです! ワインが美味しいからというのはもちろんですが
と、友人たちから聞いていました。私のフランスの旅はほとんどブルゴーニュやボルドーといった主要産地。今回はしっかりと堪能したロワールの素晴らしさをレポートしてみたいと思います。 パリのシャルル・ドゴール空港に夕刻に到着した私たちでしたが、とにかくその日のうちにロワール入りしたいと、パリを素通りして宿泊先であるロワールのアンジェという街に向かいました。 とてもラッキーだったのは、添乗してくださったガイドの飛田さんが、ボルドー大学でワインの醸造を学んだ方だったことです。そればかりではなく、中世ヨーロッパの歴史が大好きで、専門の大学で学んだとのこと。 異国への旅はこうした人との出会いも素敵です。 バスに乗るとさっそく 「みなさん、今回はフランス語を学んで帰ってくださいね。まずフランス語は中国語と同じように考えるとわかりやすいんですよ」 というおしゃべりからはじまりました。 それからアンジェに到着するまで、フランス語の楽しい一言レッスンが続きました。
■ロワールを体で実感した旅今回のロワール紀行では、アンジェの街を拠点にロワール河を何度も往復して、ワイン産地を巡りました。 教科書的なワインの勉強でロワールを学んではいましたが、地形、気候、風土……様々なことを実際に目でみてみると、なぜそのワインがそういう味わいになるのか、っていうことが体で理解できてきます。 とっても楽しくてためになりますから、ワインに興味のある方は、現地を訪問されることを絶対にオススメします! フランスの文化は、ロワール河を中心に興ったと言われています。 名物料理は川魚のお料理で、鮭、鯉、カマスなどが大河を悠々と泳いでいるそうです。ちょうど小船をだして釣りをしている人たちにも出会えました。 美しい川と田園風景を持つこのロワール地方では「昨日のことをくよくよせずに楽天的に生きる」といった気質の方が多い土地なんだそうです。 近代化の波もこの地方にはまだ押し寄せておらず、産業といえば農業といった土地です。この地方独特の赤牛が心地よい日差しのなか、のんびりと草を食べている風景が目に付きます。歴史から取り残されたような佇まいが素敵です。
■ロワールのお城ロワール地方といえば、いうまでもなく古城めぐりです! 私はこのときばかりはワインも忘れてしまいます(笑)。 ロワール地方にはフランスでも名高いロマンティックなお城が数多く点在しています。 中世に築かれた軍事目的の城と、ルネサンス期以後に王侯貴族の住居とされた城館とかが混在しているのだそうです。 軍事目的としてのお城としてソーミュール、シノン、シャトーダンなど、王侯貴族の住居としてシャンボール城、シュノンソーなどが有名です。 このような古城の歴史の説明を受けながら、ロワール河にそってのドライブは最高でした。 心に残った2つのお城をちょっとご紹介してみます。
■レオナルド・ダ・ヴィンチが起工に参加したと言われるシャンボール城
天守の中央にお城の目玉ともいわれる階段があり、窓があいた円筒の周りを2重に取り巻く螺旋構造になっています。
このお城は、まつわる恋物語が多いことでも有名です。そもそもの着工のきっかけが若き日のフランソワ1世の恋心から。隣にきれいな女性がすんでいたためにシャンボール城を建てたとか、夜な夜な屋上で恋を語ったり星占いをしたとか。 またルイ13世は侍女と密会したそうですし、その後のルイ14世、ルイ15世もこのお城で色恋沙汰が絶えずあったそうです。建物の魅力もさることながら、石壁が語る艶史がロマンティックなとっても面白いお城です。 私も中世に戻ってロマンスしてみたい、なんて(笑)。
赤ではシノン、ブルグイユ、白ではヴーヴレ、モンルイといったワインが有名ですよね。 ちょっと面白いところでは「サンタクロースのブルグイユ」っていうワインがあります。ご存知ですか? 正解は「サン・ニコラ・ド・ブルグイユ」というワイン。 「サン・ニコラ」すなわち、聖ニコラさんっていうのは、サンタクロースさんのことなんです。
■ジャンヌ・ダルクが神のお告げを伝えたシノン城一方のシノン城はロワール河支流、ヴィエンヌ川のほとりに建っています。 今はもう亡くなってこの世にいない私の父親から、「ジャンヌ・ダルクのような勇気ある女性になってほしい」と言われて育ってきたので、ちょっと感慨深くこのお城を訪問しました。 夕焼けに染まるシノン城をみながら、ジャンヌ・ダルクとシノン城の物語を例の飛田さんが涙ながらに語ってくれました。 15世紀、ジャンヌ・ダルクが神のお告げをシャルル7世にこう伝えたそうです。 「王太子殿下、私はジャンヌと申します。神様は殿下にランスで戴冠し、オルレアンの町を救うよう命じられています」 この言葉に勇気つけられたシャルル7世は、激戦の末やっと王座を手にいれたのだそうです。
シノン城は美しいお城というより荒廃した要塞に近く、他のお城に比べるとあっさりとした印象ですが、また逆にそこが趣でもあるんですね。 このシノン城もシュノンソーと同じくトゥーレーヌ地区にあります。そしてワインは何といっても、ソミュール・シャンピニーやブルグイユとならんで、ロワール最高の赤と称されるシノンです。 このシノンのアペラシオンは、ヴィエンヌ川を挟んだ2つの丘の斜面の地域と、川が合流する三角州状の砂州の3つのエリアに分かれます。 この砂地で膨大な量の薄っぺらいワインが産み出されて多く出回っているので、シノンを「薄っぺらく、青っぽくて、酸っぱいワイン」と思っている方もいるかも知れません。 でもロワール随一といわれるシノンは、ヴィエンヌ川の両岸の小高い丘の斜面で造られる、しっかりとした赤ワインによって名声が築かれているんです。こういうことも現地で体で感じてわかることですね。 現地を体験するとワイン選びが上手になりますよ!
■ドメーヌ・ド・ラ・シャルモワーズを訪問しました。さて、こんどはワイナリーの訪問のお話を。 ドメーヌ・ド・ラ・シャルモワーズはトゥーレーヌにある非常に評価の高いワイナリーです。訪問してその素晴らしさの秘密を探ってみました。 このドメーヌはトゥーレーヌ地方の最東端(内陸部)に位置するため、トゥーレーヌを支配する湿って温暖な海洋性気候の影響だけでなく、乾燥して夏に暑く冬に寒い大陸性の気候の影響もうけています。トゥーレーヌ西部に位置する生産者の持つ気候とはちょっと違うものなんです。 本来、ソーヴィニヨン・ブランとガメイは大陸性の品種であるため、海洋性気候の影響が少なく大陸性気候の影響が大きい内陸の土壌で真価を発揮します。 ですから、ドメーヌ・ド・ラ・シャルモワーズはソーヴィニヨンとガメイの栽培にうってつけのミクロ・クリマにあると言えます。 とはいっても、完全な大陸性の気候をもつサンセールやボージョレーに比べると、夏も冬もおだやかさがあるというメリットも持っていますので、それらの地域よりは果実味の豊かなワインになります。 さらに、シャルモワーズはロワール河に面した全ての畑の中で最も高い斜面に位置していて、並外れたぶどうの成熟が可能になっています。 ロワールの生産者の頭を常に悩ます現象、すなわち、春に川沿いの低地にたまる冷気(=霜)の被害もほとんど受けることがありません。 シャルモワーズのもつミクロクリマ(微小気候)が、いかに素晴らしいかがご理解頂けるかと思います。 いえ、現地をみて頂ければ、すぐにわかることなんですけれど……。
■ヴィエーユ・ヴィーニュ・ドメーヌ・ド・ラ・シャルモワーズ2000このワインは樹齢が30年以上のぶどう木から造られています。 輝くようなルビーレッドの色調をもっていて、イチゴ、フランボワーズ、カシス、キルシュ、コーヒー、ドロップなどのアロマと果実味があふれるように発散しています。 ごく微量に感じられる炭酸ガスによっていっそう際立っているフレッシュさもあるので、がぶがぶ飲める軽やかさもあります。暑い日に楽しむワインとして最高です。 悲しいことに、実はこのワインは非常に少ししか生産されていません。
■オーナー、アンリ・マリオネさんのこだわり!
ドメーヌの畑の畝幅は3メートルと非常に広く植樹密度はそれほど高くありません。一時期、トゥーレーヌ地方では機械化をすすめてその体制をとるという時期がありました。 そしてアンリ・マリオネさんももれなくその体制をとり、機械化に対応するために、ぶどうの樹の畝幅を3メートルにしたのだそうです。結局マリオネさんは機械化を採用せず、現在にいたるまで、手摘みで収穫をおこなっています。 しかし、ぶどう樹の畝幅を3メートルととっていることによって、葉が広い表面積を得て光合成がよりよく進むようにしているのだそうです。 仕立てはグイヨー・サンプルで、ぶどうの樹の高さが高く1メートルあり、この高さも葉がより多くの表面積を持てるようになっています。 マリオネさんが良いワインを造るために求めていることは 「上品で強すぎない、やわらかく軽やかでフルーティさを持つぶどうをつくること。そのために必要なことはぶどう樹の高さがあって数量がすくないことである」 とおっしゃいます。 「土地の力と自分が造っていきたいコンセプトにあわせて結果としてこの仕立て方になってきている」 と言い切っていました。 また、彼は化学物質の使用をできるかぎり避けてぶどう栽培を行っています。
ぶどうの房はすべて手摘みで収穫されその場で厳格に選別されます。選別されたぶどうは、潰れて酸化する危険のないように底の浅い籠に集められます。 畑の畝幅は3メートルもあるためトラクターが畝の間に入ってくることができ、収集したぶどうをすばやく醸造所に運び込むことができるのです。 結局手摘みにしたとは言え、機械化のための3メートルの畝幅は、フレッシュなワイン造りに役立っているんですね。
■アンリ・マリオネさんはガスの達人!!アンリ・マリオネさんがガメイの醸造に適用している、炭酸ガス浸漬法(カルボニック・マセラシオン)はボジョレーの多くの醸造元で行われている方法とは若干異なります。 ボジョレーの多くの蔵では、発酵中にポンピングオーバーを行うため、果皮が破れて果汁が流出するします。よって発酵は液体中で行われます。 しかし、アンリ・マリオネさんは、カルボニック法の発酵の最中にポンピング・オーバーをしないため、果皮が破れて果汁が流出することはなく、発酵はぶどうのそれぞれの粒の中で行われるのです。 炭酸ガス浸漬法においては、液体が少なければ少ないほど果粒からより多くの要素を引き出せるため、ワインはよりフルーティで、色の濃い、アロマティックなものになります。 唯一行われる介入は、発酵の初期に果汁を温めることだけです。 ぶどう自体の重さによって少しの液体が発生するため、この液体を25℃から30℃の熱交換機の中で温めてタンクの下部に再注入します。 こうすることによって熱が伝わって発酵が問題なく開始されるそうです。 カルボニック法の発酵を6日間続けたあと(50%のぶどうはまだ未発酵)ぶどうをタンクから出して圧搾機にかけて搾汁します。 その果汁をタンクにいれて発酵を終了させ、続いてマロラクティック発酵を15日〜3週間かけて行っています。発酵終了後、ワインは澱引きされ、瓶つめされるまでタンクで熟成されます。 つまりカルボニック法と一般的な発酵法の中間のような方法を採るのですね。 彼の醸造方法は経済的なリスクのあるものです。 収穫が手摘みであって機械収穫よりも3倍のコストがかかること。それに発酵前には二酸化硫黄の添加をせず、完全に自然なものであるゆえに発酵失敗のリスクがあるという2点です。 特にカルボニック法でポンピング・オーバーをしないとわずか数時間で揮発酸量が急激に上昇し酢酸が発生する危険性があります。酢酸とは「お酢」ですから、つまり酸っぱくてワインには大変に不快な酸です。 さらにひとつのタンクで酢酸が発生すると別のタンクに感染する可能性が高いのだそうです。 揮発酸量は少し上昇すると下降することはほとんどないため、この方法を実践するためには非常に的確な配慮が要求されます。 揮発酸量が上昇した場合には、できるだけ早く澱引きするか、二酸化硫黄を添加することによって危険を回避しているのとか。 ボジョレーの多くの造り手は、この揮発酸の上昇という問題があるゆえにポンピング・オーバーをしないマセラシオン・カルボニックという方法をつかうことを止めてしまったとのことでした。 ポンピングオーバーをしないでカルボニック法を行うと、実に多種多様のアロマをもち、ぶどうの色んな要素を取り込んだ複雑なワインができるというメリットがある一方、リスクも大きいんです。 でもマリオネさんは、そうしてできるワインの品質にこだわりをもっていらっしゃいます。
■日本人女性が所有する、シャトーレストラン
今田さんは居住こそされていませんが、このシャトーには彼女のお部屋もあり、ときどきそちらにみえるというお話をうかがいました。 このレストランのシェフは以前日本のトゥール・ダルジャンでシェフをしていた方で、とても流暢に日本語を操ります。 中国人の奥様が心地よいサービスをしてくださり、素晴らしいお料理を、ロワールのワインとあわせて楽しみました。7歳になるお嬢さんがおられ、子やぎが彼女のあとを追いまわしています。 「やぎが友達なの」といって、おおきな哺乳瓶でミルクをあげ楽しんでいるのですね。すばらしい環境で、自由奔放に暮らしているお嬢さん、ほんとにかわいらしく幸せな家族に接することができました。 こんなにも豊かなロワールのとっても素敵なレストラン。 日本人のワインファンが訪ねてきてくれて、その人たちにゆったりとしたくつろぎを持っていただけるような生活をしてみたいと、うっとりと夢みてしまいました。
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