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ディアソムリエ・ナビゲーション
Dear Sommelier ソムリエに綴る・・・

ディアソムリエ <page 2/4>

【強みを活かす】

――― 石田さんはソムリエ気質の職人だよ。マネージャータイプじゃない ―――

ニューオータニに勤めていた頃、ホテルの大顧客の方に言われました。とても悔しくってね、「いや、できる。ソムリエはマネージメント向きの職業なんだから!」とトゥールダルジャンを離れ、レストランマネージャーの道を進み始めたんです。もともとソムリエというタイトルに留まっていることには抵抗があったというのもありますが。

マネージャーやってて“いつもこれだな”というのが“人”の問題。やはり人には得手不得手があるもので、“どうしたらよくなるだろうか?”って考えるとどうしても弱い部分が目についてしまうんですよね。自分自身に向けても同じ。弱みってすぐ見つけられるものだからでしょうね。

『不得手なことの改善にあまり時間を使ってはいけない。自らの強みに集中すべきである。無能を並の水準にするのは、一流を超一流にするよりもはるかに多くのエネルギーと努力を必要とする』

ビジネス界にもっとも影響を与える人物として知られるドラッガーの言葉です。
まさに“目からウロコ”でした。

仕事上の個性というものは仕事につくはるか前に形成されている。だから自分の得意とする仕事のやり方を向上させることが、より早く、よりよい成果を挙げることができるという意味なんですね。

松坂投手が、「今シーズンは、日本にいるときより四球が減りました」と胸を張るより、みんなは160km/hの豪速球で三振ショーをみせてくれるほうが興奮するもんね。

僕らって、とかく自分の欠点のほうに目がいっちゃって、そんなコンプレックスを抱えながら窮屈に動いてしまってると思うんですね。もちろん、弱点は克服していかなきゃならない。でも本当に勝負するときに大切なのは、ミスをなくすことじゃなくて、自分の一番強い部分を活かすほうがいいはずなんです。

つまり得手不得手を積んだら、あとは自分の“これなら人には負けない”というもので勝負するほうがいい。そんなことを知るようになってから、“僕がかなりのところまでいっても勝負できるのはやはりソムリエだよな。マネージャーの仕事も素晴らしいけど、自分の強みを活かしてこそなんだよな。僕はやっぱりソムリエなんだ”って意識するようになりました。

 

【体験と経験】

――― これは失敗ではない。このやり方では上手くいかないことが解ったのだ ―――

発明王エジソンの言葉だそうです。さまざまな実験においてエジソンはこう考え、次につなげていったとのことです。

話は飛びますが、“年の功”っていう言葉があります。やはりさまざまな経験を積んだ人間は違うということなんだと思います。もちろんその通りですよ。でも僕は最近、“必ずしもそうじゃないな”と感じています。

随分前ですが、ジャイアンツの定岡投手が連勝を続けているとき、「どうしてなのか自分でもわかりません」とインタビューに答えていました。「なんでいいのか解っていないなら先が知れてる」ってテレビで突っ込まれていて、妙に納得しました。

体験から得た知識や知恵はとても大切なものだと思います。でもそれだけでは継続させることはできない。“なぜこうなるのか”という疑問意識が常に必要で、そう考えることが“理論づけ”に繋がります。そうして得た理論を実践してみる、そして結果を出す、これを繰り返すことにより、その体験は、経験へと繋がっていくと思うんです。

同じミスを繰り返す人と、繰り返さない、それどころか新たな発見までして、むしろ成長してしまう人がいます。一日一日やることすべてのなかに失敗と成功があって、それが体験だといいます。

失敗であれ、成功であれ、そこからなにを学んだかが大事なんだと思うんです。だから、どんなにキャリアが長くって豊富な体験があっても、それが活かされていなければ“年の功”なんて意味はあまりないと思うんですね。「俺が若い頃もそうだった。いやもっと大変だった」なんて言葉は誰でも言えることです。

僕ね、現場では本当に失敗ばかり繰り返しているんです。ワインをこぼしたり、オーダーを間違えたり……、トゥールダルジャン時代の同僚の吉田に、「こんなにミスばかりしてるのに、本番(コンクール)では絶対しない」といつも冷やかされていました。

支配人として威風堂々と振舞いながらも、ワゴンのケーキを丸ごと落としたりしたこともありました。この間も、料理の感想(辛口な)を伺っている時のふとした一言で、冷静だったそのお客様を怒らせてしまったことも。結構お粗末なものです。

でも次からはかなり意識をします。“二度としないぞ”って。僕が本当に落ち込むのはミスした時じゃなくて、二度続けて同じミスをした時です。言い方を変えれば、ミスしても“よし、これを次に活かそう。これで少しだけ成長できるんだ”って考えたいんです。

歳をとっていれば、それなりの体験は誰だってあるもの。でもそれだけで、そこから何の教訓も、改善も得られていなければ、そこから得た理論を実践できていなければ、それはただの体験。先輩として誰からも認められることはない。

体験と経験、同じような言葉として使ってしまいそうだけど、意味はかなり違うんですよね。

 

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