<page 2/4>
“独創性などない”
たくさんの反論を受けそうな言葉ですね。でもこれはゲーテの言葉です。まさしく賢人、いや全人であるゲーテはこのように説明をしています。
「独創性とういうことがいわれるが、それは何を意味しているのだろう! われわれが生れ落ちるとまもなく、世界はわれわれに影響をあたえはじめ、死ぬまでにそれが続くのだ。いつだってそうだよ。一体われわれ自身のものと呼ぶことができるようなものが、エネルギーと力と意欲のほかにあるだろうか! 私が偉大な先輩や同時代人に恩恵をこうむっているものの名を一つ一つ挙げれば、後に残るものはいくらもあるまい」
またこうも言っています。
“独学は非難されるべきもの”
「なにもかも独学で覚えたというのは、褒めるべきこととは言えず、むしろ非難すべきことなのだ。才能のある人が生まれるとすれば、それはしたい放題にさせておいて良いはずはなく、立派な大家について腕を磨いて相当なものになる必要があるからだよ」
“偉大なものを受け継ぐ”
「この世において、画期的なことをするためには、周知のとおり、二つのことが肝要だ。第一に、頭がいいこと。第二に、大きな遺産を受け継ぐことだ」
―座右のゲーテ 齋藤孝著(光文社新書)より引用
とかく、クリエイターは独自のやり方、スタイルを切り開こうとする。しかし大成を果たした人や門、そういったところで基礎をしっかりと学び、習得することが何より大切で、それは将来、自分の“使い尽くさない資源”となっていくのだとゲーテは言っているのです。
そうだとすると、僕が“田崎のコピー”言われながらも、続けてきたことは、まさにこの“ゲーテの言葉”に対応することだったんだと、今ではすっかり自信と確信をもつことができたんです。
アラン・デュカスも最初は、“彼の料理はフランス料理じゃない。イタリア料理だ”などと言われたそうです。しかし、パスタやニョッキ、ガンベローニ(海老)やラディッキオといったイタリアらしい食材(デュカスはむしろ地中海と捉えていますが)がメニューから外れることはありません。そして、パリ、ニューヨークで店を始め、“フランス料理”を展開すると、両店においてミシュラン三ツ星を獲得しました。“僕の料理がイタリアン? それじゃ、みなさんが望むフランスらしい料理を創ってみましょうか”と言わんばかりです。今では彼をイタリアンなどと言う人はいません。ベージュ東京での料理には、「日本(和食)を意識し過ぎている。望まれているのは、彼の本当のフランス料理だ」と言う人が多くいるようです。さて、今回はどうでしょうか。
ガブリエル・ココ・シャネルとも共通しています。黒い服をデザインし、身につけ、シンボルカラーとしました(それまでは“黒”は喪服にしか使われていませんでした)。ズボンを最初にはいた女性も彼女ですし、脚(ひざ下)がみえるスカートを最初にデザインしたのも彼女だったそうです。おそらく(間違いなく)相当な批判を受けたことでしょう。しかし、現在黒い服やズボン、ひざ下がみえるスカートを持っていない女性はまずいないでしょう。
つまり、最初は何かと良くも悪くもいわれる。“自分は間違っているかもしれない”と思ってしまいそうになるけど、挫けず、信念を貫くべきなんです。大切なのは基本、そして歴史や伝統。それらを十分に習得したとき、はじめてその上に個性を積み上げれば、それが“自分らしさ(=スタイル)”になるわけです。
|