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「アール・ドゥ・ラ・ターブル」
直訳でテーブルアート、つまりテーブルコーディネイトのことです。
フランス人はArts de Vivreアール・ドゥ・ヴィヴルという言葉を好んで使います*。洗練された、エレガントな文化やものに触れ、暮らしを、人生を楽しもうという美意識と文化的なものに対する知識や造詣だと、僕は解釈しています(とはいっても日本人の僕では理解はまだまだ足りないところだとは思いますが)。
その対象は、絵画などの美術品を始め、映画、もちろん料理、フラワーコーディネイトにテーブルコーディネイト、雑貨や小物なども含まれます。
*伝統を重んじるトゥールダルジャンのオーナー、クロード・テライユ、コンテンポラリー(現代的)を常に追い求めるアラン・デュカス。この一見相反する思想をもつ二人でさえも、アール・ドゥ・ヴィヴルは共通するキーワードとなっています。
アール・ドゥ・ラ・ターブルはこのアール・ドゥ・ヴィヴルの大切な一部分になるわけです。この美意識は必ずしもお金をかけて、ぜいたく品にかこまれて暮らすことではありません。現代ではむしろよりシンプルで、かつ洗練されたものを指していると思います。豪華絢爛なものより、よけいなものを削ぎ落とした、具体的にいえば、より小さなもの、“ミニマリズム”の精神へと共通しています(「本当の贅沢とは付け加えることではなく、取り去ることだ」とココ・シャネルは言っているそうです)。
日本でいう“わびの世界”です。なぜ利休はあんなに小さな入り口の茶室を造ったのか。なぜそれまで15を越す品がならぶ茶懐石を一汁三菜に縮小させたのか。そんな世界への共通点すら感じてしまいます。
すこし大げさになりましたが、解っていただけると思います。そう考えるとグラスはよりシンプルで、小さい方が自然であり、より現代的なのです。
先の談義で、「うちはテーブルが小さめだから……」というのがありました。確かに昨今テーブルは小さくなる傾向があります。そこにバランスのとれたサイズとデザインのグラスを選ぶことこそ、アール・ドゥ・ラ・ターブルなのです。
アラン・デュカスはベージュ東京のために、“マドモワゼル”という90mlの小さなフルートをデザインしました。女性の手や口のサイズに合わせた、持っている姿が美しく映るようにです。パリでは70mlほどの少量のバイザグラスサービスをする店が増えているようです。そして、現代の生産者は、より力強いワイン造りよりも、ピュアで、バランスのよいワイン造りを目指しています。
ワインをより力強く感じさせ、より高価であることを表すために大きなグラスを差し出す。
なんて無粋なことだと思いませんか?
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