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リーデルグラス
リーデル一族は300年以上前よりガラスづくりに携わってきた名家で、ボヘミア、ポーランドなどを渡り、1956年よりオーストリアに本拠を構えます。リーデルはこれまでの色つきで装飾的なグラスから、シンプルで、飾りのない、薄い仕上がりの脚の長いワイングラスへと革新を成功させたのです。1960年代に発表された“ソムリエシリーズ”はワインの特徴ごとにフォルムを変え、それぞれ異なるタイプの香り、味わいの広がりを最大限に引き出すグラスとしてその名を世界に知らしめました。
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僕の周辺がまだまだワイングラス発展途上だった頃からすでにリーデルグラスを採用していたレストランやバーもあったかと思います。当時よく職場の上司や仲間とボルドーセラー*に行っていまして、ワインがすべてリーデルでサービスされるのをすごく羨ましく、憧れていましたね。
ボウル(ワインを注ぐ部分)が大きなそのグラスは“ボルドー・タイプ”、“ブルゴーニュ・タイプ”と名づけられていました。
「ボルドーを飲むならこれしかない!」といったイメージを強く植え付けられていました。
*青山にあるワインレストラン。ワインを主役としたレストラン・バーの草分け的存在。通常のレストランよりは破格の値段でワインが楽しめるレストランとして知られていた。
“ワインのサービス向上イコールリーデルグラス”ぐらいの思いがあり、レストランのマネージャーに頼んで、ブルゴーニュ・タイプを買ってもらったのを覚えています。しかし、それらはすぐに割れていってしまい、すごくショックを受けました。自腹で補充したこともありました。
トゥールダルジャンへ異動になると、伝統を重んじるからでしょうか、リーデルはほとんど使われていませんでした。ムルソーだろうが、モンラッシェだろうが、すべて白ワインはトゥールダルジャンのマーク入りの180mlくらいの容量の小さなグラスに注がれていました。そこでもやはり総支配人に話をもちかけては、ボルドー、シラー、ヴィンテージシャンパーニュ、コニャック、ポートワインと揃えてもらいました。
こうして、ワインに応じて様々なフォルムのグラスを使い分けるソムリエとしての自分にすっかり満足していたんですね。いずれにせよ、リーデルは“ワインを美味しくする”というグラスの価値観を作ったんじゃないかなと思います。
それからは、バカラ、ロブマイヤーなど高級グラスメーカーの“ブルゴーニュ”、“ボルドー”といったシリーズも目立つようになりました。リーデルの『ヴィンテージ』や『ソムリエシリーズ』とよばれるハイレンジもそれほど珍しくはなくなってきました。ワイングラスはますます洗練されてゆき、レストラン、バーもグラスにとてもお金をかけるようになったのです。それが店のプレステージかのように。
リーデルグラス大好きの僕は一方で、1個1万円を越すようなそんな高級グラスにはあまり興味は湧きませんでした。使えばたぶん、「素晴らしい!」って思うのだろうけど、すごく壊れやすそうだなあって思って、こわくて扱えない。やっと買ってもらったブルゴーニュグラス6個すべてがあっさり割れてしまった悪夢がすっかりトラウマになってしまったんですね。これは今でも続いています。「これいいなあ」って思っても、次にすぐ「でもすぐに割れちゃうな」とあきらめてしまいます。
高級グラスは専用のラックが必要だし、手洗いするにしてもその手間ヒマもさることながら、下げておく場所だってきちんと確保しておかないとたちまち粉々になってしまう。お客様が割ってしまうことだってある。僕もボルドーセラーで割ったことがあります。
「なんだ、そんな次元の低い話か」と笑う人もいるかもしれません。でも決してバカにできないことだと思いますよ。なんていったってとても高いでしょう。\20,000のワインが売れたとしても、\10,000のグラスが割れてしまったら、利益どころか赤字でしょ。
レストランにおけるグラス選びのポイントのもっとも重要なひとつ、それはブリケージの問題なのです。割れてしまったら、どんなよいグラスでもゴミはゴミです。「それは管理の仕方次第だよ」という方もいるでしょうけど。
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