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■ドメーヌ・シャンパンとは?
ドメーヌ・シャンパン。すなわち、自社畑のぶどうのみを用い、ベースワインの醸造から第二次発酵、瓶熟まで、すべての行程をまかなう生産者によって作られたシャンパンのことである。
シャンパーニュ地方ではこうしたドメーヌをレコルタン・マニピュラン、「自らぶどうを収穫し、醸造する者」と称している。
フランスの他のワイン産地と異なり、シャンパーニュ地方ではぶどうの栽培とシャンパンの製造は分業が基本であり、よく名前の知られた20あまりの大会社、いわゆるグランド・マルクに支配されているのが実情だ。
シャンパーニュ地方はフランスでも最北端のワイン産地で、年によりぶどうの出来不出来が顕著に出る。毎年、安定した品質のシャンパンを出荷するため、品種、収穫される畑、ヴィンテージなどのさまざまなコンポーネンツはブレンドが基本である。
したがって、ブレンドにおいてより多くの選択肢をもつグランド・マルクのシャンパンは、中小の生産者、いわんや、自社畑のぶどうしか使うことの出来ないレコルタン・マニピュランのものよりも安心して楽しめる。そう考えられてきた。
シャンパーニュ地方にシャンパーニュACという単一のAOCしか存在しないのは、アイのピノ・ノワールが素晴らしいとか、メニルのシャルドネは最高だと皆認めつつも、ブレンドを基本としているからに他ならない。
■21世紀に入り……
ところが21世紀に入り、シャンパーニュ地方に地殻変動が起き始めた。ブレンドによる品質の平準化はいわば個性の放棄に等しい。
そう考えたワイン愛好家たちの目が、単一クリュや単一品種など、個性的なシャンパーニュを造りだすレコルタン・マニピュランに向けられていったのである。
果たして、ドメーヌ・シャンパンは明確な個性をもち、グランド・マルクとは一線を画した存在なのか。実際にテイスティングしながら解答を出したい。
※写真は「アッサンブラージュの天才」と呼ばれるエリック・ロデ氏。
【1】 ヴァレ・ド・ラ・マルヌ
マルヌ川流域のぶどう栽培地。エペルネの北に南向き斜面となるグラン・クリュ(格付け100%)のアイがあり、その西隣にプリミエ・クリュ(90%以上)のディズィ(95%)、キュミエール(93%)と連なり、さらに西に進むと土壌の石灰質が少なくなるため格付けが90%未満のクリュとなる。
エペルネのはるか東にもグラン・クリュのトゥール・シュール・マルヌ(ただし、シャルドネは格付け90%)があるが、ピノ・ノワールの産地としてプルミエ・クリュ程度の格付けとする見方が有力である。マルヌ河流域は比較的温暖でぶどうの熟度が高い。ピノ・ノワールの産地だが、それに負けず劣らずピノ・ムニエも良質なものが収穫される。
◆ガティノワ (アイ)
1696年、アイ村に創立の生産者。シャンパンの生産は18世紀から始めた。アイ村にのみぶどう畑を所有し、マルヌ川沿いの急斜面という最高の区画も含めて7.2ヘクタール。したがってモノ・クリュ(単一クリュ)のシャンパンを造るレコルタン・マニピュランである。
10%のシャルドネは斜面下部の白亜質の豊富な土壌に植えられている。非発泡性ワインであるコトー・シャンプノワのアイ・ルージュを秀逸年のみに造り、これもまた評価が高い。
ガティノワ・アイ・トラディシオン・ブリュットNV
ピノ・ノワール(PN)90%、シャルドネ(CH)10%
◆ルネ・ジョフロワ (キュミエール)
1600年ごろ、キュミエール村に創立した栽培家。「2000シャンパーニュ」の著者リチャード・ジュリンはキュミエール村をピノの産地としてグラン・クリュに値するとしている。レコルタン・マニピュランとして、1948年ごろからシャンパン造りに従事。
所有畑13ヘクタールのうち、11ヘクタールをキュミエール村にもち、ディジィ村、オヴィレール村でも2ヘクタールの畑を栽培する。ぶどうの栽培法は15年前からほぼ有機。一次発酵をオークの大樽で行い、マロラクティック発酵は施さない。残糖は1リットルあたり6グラムと低い。
ルヌ・ジョフロワ・プルミエ・クリュ・キュヴェ・ド・レゼルヴ・ブリュットNV
PN50%、ピノ・ムニエ(PM)40%、CH10%
【2】 モンターニュ・ド・ランス
ランスとエペルネを隔てる、モンターニュ・ド・ランスと呼ばれる森を囲むぶどう栽培地。ブージィ、アンボネイ、ヴェルズネイ、ヴェルジィ、ルーヴォワ、マイィ、ボーモン・シュール・ヴェル、シルリィ、ピュイシュウの各村がグラン・クリュに指定されている。
ベルムナイト階白亜質の土壌で、とりわけピノ・ノワールの産地として知られる。グラン・クリュの畑でも、ヴェルズネイとヴェルジィは北向き、ブージィ、アンボネイは南向きだが傾斜が緩い。
◆ポール・バラ (ブージィ)
ブージィ村で1833年から続く栽培家で、レコルタン・マニピュランとしての歴史は1955年から始まる。ブージィ村に11ヘクタールのぶどう畑を所有し、ピノ・ノワールが9.5ヘクタール。残りがシャルドネである。醸造にはキュヴェ(一番搾り)のみを用いる。
ポール・バラ・ブージィ・ブリュット・レゼルヴNV
PN80%、CH20%
◆アンリ・ビヨ (アンボネイ)
1930年からアンボネイ村でレコルタン・マニピュランを営むアンリ・ビヨ。この村に5ヘクタールのぶどう畑を所有する。
リザーヴ・ワインの使用率が50%にも達するのが特徴で、マロラクティック発酵は行なわない。
アンリ・ビヨ・キュヴェ・トラディシオン・ブリュットNV
PN75%、CH25%
◆エリック・ロデス (アンボネイ)
1900年ごろからアンボネイ村でシャンパン造りに従事し始めたロデス家。アンボネイ村にのみ16ヘクタールの畑を所有する。このハウスの特徴は何と言っても樽発酵。現当主エリック・ロデスはかつてクリュッグで働いたことがあり、その経験が生かされている。ノンヴィンテージには40〜45%のリザーヴ・ワインが使用される。
エリック・ロデス・アンボネイ・キュヴェ・デ・クレイエールNV
PN50%、CH50%
◆エグリ・ウーリエ (アンボネイ)
フランシスとミシェルのエグリ親子によって営まれるアンボネイ村のレコルタン・マニピュラン。6ヘクタールの畑を所有するアンボネイ村の他、ブージィとヴェルズネイにもそれぞれ0.5ヘクタールの畑をもつ。ベースワインは小樽発酵で、これがしばしばブラインドでボランジェと間違われる原因。
通常のキュヴェはピノ・ノワール70%、シャルドネ30%だが、ピノ・ノワール100%から造られるブラン・ド・ノワールもあり、それは樹齢50年以上の樹のぶどうを使用する。
エグリ・ウーリエ・グラン・クリュ・ブリュットNV
PN70%、CH30%
◆フランソワ・スコンデ (シルリー)
ランスの東に位置するシルリーで、1976年からレコルタン・マニピュランを営む。全体でも94ヘクタールしか栽培面積のないシルリーの畑は、そのほとんどがグランド・マルクによって用いられているが、フランソワ・スコンデはシルリーのぶどうのみを使用してシャンパンを造る唯一の生産者である。
フランソワ・スコンデ・シルリー・グラン・クリュ・ブリュットNV
PN67%、CH33%
【3】 コート・デ・ブラン
エペルネの南に伸びる丘陵の東向き斜面にぶどう畑が広がる。白亜質の含有量が豊富でミネラルの風味豊かなシャルドネの産地である。
シュイィ(ただし、ピノ・ノワールは格付け95%)、オワリィ、クラマン、アヴィーズ、オジェ、ル・メニル・シュール・オジェの各村がグラン・クリュに指定されている。
◆ギィ・ラルマンディエ (ヴェルテュ)
それに格付け95%のヴェルテュに本拠を置き、グラン・クリュのクラマン、シュイィにも畑をもつ。1977年からレコルタン・マニピュランとして元詰めのシャンパン造りを始めた。シャルドネ王国のコート・デ・ブランにあって、ヴェルテュは粘土質の表土が多い一部の区画から上質のピノ・ノワールが収穫されるため、プリミエ・クリュ・ブリュットNVにはこれを10%ブレンドしている。
ギィ・ラルマンディエ・グラン・クリュ・クラマン・ブラン・ド・ブラン・ブリュットNV
CH100%
◆ランスロ・ロワイエ (クラマン)
つい最近までフランス国内でしか販売されていなかった小規模のレコルタン・マニピュラン。本拠地のクラマンの他にも、アヴィーズ、オジェ、シュイィに畑を所有する。リザーヴ・ワインはオークの大樽で熟成させている。
ランスロ・ロワイエ・キュヴェRRブラン・ド・ブラン・ブリュットNV
CH100%
◆ジャック・セロス (アヴィーズ)
アヴィーズのカリスマ的存在。アヴィーズ、オジェ、クラマン、それにアイにもぶどう畑をもつ(アイのピノ・ノワールからブラン・ド・ノワールを造る)。ぶどう畑はパーセルごとに醸造され、ベースワインはすべて小樽で発酵させる。
1年間の樽熟成の最中、1週間に1度バトナージュを行なうが、マロラクティック発酵は行なわない。リザーヴ・ワインは古いワインの樽から使用した分を次の年のワインで補填してゆくシェリーのソレラシステムを採用。デゴルジュマンまでの瓶熟期間も8年間と異様に長い。
ジャック・セロス・キュヴェ・トラディシオン・ブラン・ド・ブラン・ブリュットNV
CH100%
◆ギィ・シャルルマーニュ (ル・メニル・シュール・オジェ)
1892年創業の長い歴史をもつギィ・シャルルマーニュ。ル・メニルやオジェなどコート・デ・ブランのグラン・クリュを中心に22ヘクタールものぶどう畑を所有する。
名声とは裏腹に面積が広すぎて品質のばらつきが大きいル・メニルだが、ギィ・シャルルマーニュは丘の中腹斜面という絶好の位置に畑をもつ。
ギィ・シャルルマーニュ・ブラン・ド・ブラン・グラン・クリュ・レゼルヴ・ブリュットNV
CH100%
◆アラン・ロベール (ル・メニル・シュール・オジェ)
17世紀からル・メニルでぶどう栽培に従事してきたロベール家。7つの村にまたがる11ヘクタールの畑にはすべてシャルドネが植えられている。
通常のセレクシオンにはプルミエ・クリュやコート・セゼンヌのぶどうが含まれているが、メニル・セレクシオン以上はすべてグラン・クリュのル・メニルのぶどうしか使用されない。メニル・トラディシオンは樹齢40年の古樹を用い、オークの小樽で発酵。注文に応じてデゴルジュマンをするため、今回試飲した85年ヴィンテージはじつに15年以上の瓶熟を経て出荷された。
アラン・ロベール・メニル・トラディシオン・ブリュット'85
CH100%
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【ナビゲーター 柳忠之(やなぎただゆき)】
職業名: |
ワインジャーナリスト |
ワイン歴: |
18年 |
主な資格・著書: |
珠算1級
「ワインとフード」(産調出版)監訳
「ワイン大全」(日経BPムック)監修 他 |
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